地下十一階

「よし、次は何だ!? 何でもこいよ! クソッタレ!!」
 新たに姿を表した扉を前に、半ば自棄になったかのように啖呵をきる斗馬。
「最早俺達に不可能はない……この身一つで、超えて行くぞ……!」
 弥代も、色の違う左右の瞳の奥にギラギラとした闘志を漲らせながら、そう宣言した。樹も、二人の思いを受けて拳を握る。
 そして、銀の装飾が施された扉を開く――
 現れたのは、見知ったステージだった。

「こ、ここは……!!」
 煌めくスポットライト、中央に光の溢れる丸いステージ、それを囲むミラージュがサイリウムを振り上げて犇めく姿……まさしくそこは、樹達がいつもミラージュとバトルを行う異空間バトルステージだった。
「ここで、闘えというのか――フッ、初めから正々堂々と仕掛けてくれば良いものを……」
 だが、いつものバトルと圧倒的に異なる点があった。それは、三人が今は一糸纏わぬ姿でそのステージに進まなければならない事だった。
「クロム、応えてくれ……!!………やっぱり駄目なのか、くっ」
「カイン!! カイ――ン!!!! ……ッ、畜生!!」
「ナバール………く……こんな時に何処に居る……!!」
 カルネージフォームを封じられ、悔しげに歯噛みする三人に、ステージ上部からフォルトナ男子達に向かって登壇の知らせがアナウンスされる。渋々、ミラージュが囲むステージへ進む三人。どうせミラージュ相手だからと、今のこの姿で舞台へ上がることは割り切っていた。
『キャーッ!蒼井樹くーん!! カッコいい――!!』
『斗馬くん!!素敵――――ッ!!』
『弥代様~~~!! こっち向いて――――!!!!』
 ミラージュは熱気に満ちた声を樹たちへ降り注ぐ。そんな声援をかけられるのはやはりミラージュ相手といえども嬉しい気がして、少し緊張した表情を緩めて笑顔を見せると、更に会場は歓声に沸いた。
『それでは、今回のライブはファンサービス重視で進行していきます! ミラージュの皆さん、サイリウムの用意は良いですか――?』
 その声に反応して、客席のミラージュは手にしている蛍光グリーンの持ち手がついた電光棒を、それぞれの推しの色に合わせて点灯させる。樹はライトブルー、斗馬はレッド、弥代はディープパープルとシルバーの二色。それが事前に周知のカラーである。
『ステージの三人にも、一緒にサイリウムを振って貰いましょう!』
 どうやらバトルを強いられるのでは無さそうな進行を察し、ならぱ純粋にこの場に居るミラージュのファンの望む行為をして楽しもうかと樹は思う。しかし、現実はそんなに甘くはなかった。
「ッ……!!?」
 樹たちへ差し出されたのは、異様な形をした三本のサイリウム。
「あ、こ、これっ……!!」
 その形状に思い当たるものに気付いた斗馬が叫ぶ。
『それでは、皆さんその場で四つん這いになってください
「!?? 何だッ……って……?!」
「やっぱりかよ……!! 嫌だ!! 止めろ!!」
 騒ぎ惑う樹たちの身体を押さえ付けるべく、見えない重圧が背中にのし掛かった。
「うわあっ!!」
 ドッ、とミラージュの力を使えない樹、斗馬、弥代はその力に逆らうことが出来ず、強制的にステージの上で三人肩を並べて腰を高く上げた屈辱的な四つん這いの体勢を強いられた。
「く、ぅッ……!!」
 つまりそれは、いつもは尻の割れ目に隠されたアナルまでステージに向かって露出させられているという事実に他ならない。それを先程まで樹たちの顔しか映っていなかったはずの目の前のビデオモニターが上下二分割になり、三人の苦悶の顔とひくひくと収縮するアナルを大写しにした映像に変わっている事が如実に伝えていた。
 ヒッ……!と、樹は見ていられないとその画面から目を反らした。だがビデオのレンズは、樹の慎ましく襞を寄せて震える薄紅色のアナル、斗馬の内壁の赤をちらつかせながら艶々と汗を光らせる珊瑚色のアナル、弥代の白い尻の中心で縦型に皺を寄せてひくひくと蠢く桃色のアナル……に、最先端のAIで標準を合わせ、会場のモニターに鮮明に写し出していた。勿論その下の会陰の上部から垂れ下がる縮こまった陰嚢とペニスの裏側も、モザイク無しに映像化されていた。
 そしていよいよ、先程の三つのサイリウム――特注のエネマグラ型タイプ――を手にしたスタッフが、背後に忍び寄る。
 その気配を察し、止めろ!!と弥代が叫ぶ。この最低なステージから何とかして脱出しようと、持てる力をふり絞って身体を押さえ付け続ける見えない重力に抗い、ググ……と地に付いた左右の腕を前へと伸ばし、ステージに長い爪を立てた。だが、弥代の残されたパフォーマを持ってしても出来たのはそこまでだった。
 潤滑油がたっぷりとまぶされたエネマグラ型サイリウムが、ズブズブと音を立てるように三人の尻穴に挿入されていく。
「う、うぅぅっ――ー!!!」
「ぐあぁっ!! うぐぅ……!!」
「アアアァァァ――――ッ!!!」
 尻の上で間抜けに光を放つそれは、快感地獄へ突き落とす魔具となり襲いかかった。
『それでは、ファンの為にアイドル達がステージで乱れる姿をたっぷりと堪能させていただきましょう!』
 無情なアナウンスに、樹は悔し涙を滲ませた。ふと横を見れば、斗馬は今まで見たことが無いような絶望の瞳をしていた。弥代は、……あの弥代ですら、樹と同じく瞳から一筋の涙を流していた。ぐぅぅ……と野生動物が呻くように、低い唸り声を喉奥で鳴らしていたかと思うと、今度は大声で吼えるように叫ぶ。その繰り返しに、尻に挿入された器具が辛いのだと樹は察した。
 ただの異物による圧迫感でしかなかったそれは、不思議なことに時間が経つにつれて腸内の一点、前立腺に押し当たっているためか苦しさや痛みを感じさせなくなっていた。さらに、呼吸によって腸壁が収縮するのに合わせて締め付ければ、会陰部分に当たっている外部の部品と連動して動き、内と外から前立腺を挟んで刺激する、尻への快楽を授けるために意図的に作られた魔具の効果を、三人は今まさに身をもって思い知らされていた。
「あっ……ぐ……変、だ……も、これ……抜いてくれよぉ……頼む……」
「ぅう……ウッ❤……フッ❤ぅ……こんな姿、見せたく、無ッ……アッ❤」
 嫌だ、嫌だと弥代がしきりに首を降り始める。元々尻を使って快楽を得るのに慣れていた弥代は、もはやエネマグラによる快楽の波に全身を紅潮させ、腰を左右に揺すっていた。ペニスの先端からは、タラタラと先走りが筋になってステージに流れ落ち、小さな水溜まりを作ってすらいる。
『弥代くん、早い! もうイきそうですね、流石一流は違う!』
 そのアナウンスに呼応して、弥代様、いっぱいイってアへ顔晒して❤だの、汚いよがり声聴かせて❤や、無様に精液お漏らし射精して❤――などと書かれたきらびやかな装飾を施したハートの団扇が所々で掲げられ始める。最も、当の弥代は気付いていないが――
「ぁ、ンッ――――❤❤❤ア――――ッ!!!!!❤❤❤」
 舌を付き出して快楽の波に飲まれてしまった弥代は、ついにチンポの先からダラダラと白濁液を垂れ流し始める。それが段々と途切れ、細い糸を引くだけになっても、前立腺にあてがわれたエネマグラを腸壁の収縮で無意識に締め付けることにより再び絶頂が訪れる。ビクン、ビクン、と絶えず腰を揺らし、ア――――❤❤と甘い声と涎を垂らして、弥代は発狂しそうなほどイき続けていた。
 見目麗しい一流芸能人がエンドレスに後ろの刺激だけでイっているその姿に、ファンは歓喜する。
「オオッ――❤んな、お、俺もッ……!! だんだん変な気分に…!!アッ❤変にィッ❤ハァンッ❤❤」
 刺激にじっと堪えていた斗馬も、弥代と同じように嬌声を漏らし始めた。たらりと開いた口の端から涎が滴り、広い額から流れる汗と交わって飛び散っている。よっぽど気持ち良いトコロに当たっているのか、ハァハァと鼻息まで荒くなっていた。
「が、頑張れ、トウマ……!!! 今イったら……ヤシロみたいに戻れなくなるッ…!」
「うっ、イツキィッ……! ハァッ、ァッ❤も、俺、もぅぅ……!!❤ 腹ン中、熱ぃっ❤へん❤アッ!! おオォンッ❤❤❤」
「トウマ――ッ!!アッ❤……そ、そんな…俺、も……?」
 斗馬に声をかけたせいか、腹圧で締め付けが強くなったエネマグラは樹の身体にまで異変を起こしていた。
(き、気持ちいい……? お、俺も――――し、尻でイく……? イってしまう……!?)
 大勢のファンが見守るなか、ついに樹もその瞬間を迎えた。
 腹の奥にジリジリと電流が走るような――思わず目を閉じれば、真っ白い花火がバンと視界に弾けた。爪先に感じる浮遊感――そして甘い痺れ、思わず揺れた腰に連動して、エネマグラがググ、と前立腺と会陰を挟んで押し上げる。これまで味わったことのない愉悦に、樹もまた飲み込まれた。
 声にならない叫びを上げながら、トロトロ……と樹のチンポは涙を流すように精子をステージの上に溢していた。

『それではこれでファンサービス集会ライブステージを終了したいと思います! 頑張ってくれたステージの三人に拍手を!!』
 ワァァァ――――!! と会場全体が熱気に包まれ――そして、バトル終了とみなされたのかライブステージに華やかなファンファーレが鳴り響き、紙吹雪が舞う。
 後に残されたのは、正方形の部屋の中心で倒れた裸の三人のあられもない姿であった。


地下十二階

 先程のライブステージ終了後、しばらく気を失っていた三人だったが、やがて目を覚まし立ち上がると、開かれた下層への階段を黙々と下りていった。まだ頭の中がふわふわとした感覚は続いていたが……樹達の潜在的なパフォーマの力が、あるいは封印されし彼らのミラージュや、パレスに残ったチキの祈りの力が――快楽の渦に支配されそうだった彼等に正気を取り戻させていた。
「これは……」
 やがて樹の前に現れたのは、スタジオでよく使われている飾り気の無いプレーンな鉄扉ではなく、古典的ロココ様式の細工が成された銅の装飾が表面に施された観音開きの扉だった。これまでとは異なるその扉の造詣に、緊張が走る。
 きっとこの先はこれまで以上に厳しいミッションが用意されているはず――と身構える。対する自分達といえば、裸一つ……もしミラージュ達が襲ってきたら、と悪い考えが頭を過り、なかなか扉を開く勇気が湧いてこない。
 ……と、俯いていた樹の横に立った斗馬と弥代の手が、扉に添えられた。
「俺達なら大丈夫だ――ぜってー、クリアしてみせる」
「何を要求されようが、一流である俺にとって問題ない……さあ、意気地を出せ、蒼井樹」
「トウマ、ヤシロ……うん、頑張ろう――」
 樹が扉の銅の取っ手を握り、力を込める。左右の斗馬と弥代も共に手を添え、扉を押し開けた。

 そこにあったのは、いつもの四角い台座が三つと、それらが囲む中心にはパチパチと火の粉を上げて焚き火のように燃える炎があった。
(燃えてる……?)
 室内で赤々とした火が焚かれていることに驚きつつも、三人は炎の側へ近付いた。今回のミッションを確認しようと辺りを見回した時――
「……! オイッ!! 上!! 見ろよ……!!」
 天井の異常にいち早く気付いた斗馬が叫ぶ。樹と弥代も仰ぎ見れば、天井一面にモニターの画面が広がっていた。そこに映っていたのは……。
「?❤」
「――――!!!!!」
 三分割のモニターには、これまでのエロトラップの数々の陵辱を受ける、樹、斗馬、弥代それぞれのあられも無い――痴態とも言える姿を鮮明に写し出していた。思わず目を覆いたくなるような自分達の姿や降り注ぐ濡れた音といやらしい嬌声に、冷や汗が吹き出してくる。
「か、隠し撮り……されてたってことかよ……全部……」
「下衆共が……殺してやる……」
 怒りに震える友の姿に、樹もこのような無法行為を断固として赦すものかと、握った拳を震わせていた。そこへスタッフの機械音声が流れてくる。
『皆さん……こちらに流れているのは各階の監視カメラに映っていたものですが……このままだとこの映像、ここの主によってもうすぐネットに流出しちゃいますよ』
『何!?』
 驚愕する弥代に、スタッフは続ける。
『そうなったら最後、炎上は避けられません……そこで――私共は皆さんが炎上を食い止めることが出来るのか、三人の力で実際に炎上するリアルな炎を消すことが出来れば、これらの映像データは破棄することをお約束します!』
「ハァ? 何言ってんだ!? 自分達が仕掛けた罠にハマった俺らを、また何かの罠に陥れようと企んでるだけだろ!?」
『こちとらこれが仕事ですので――それでは、この映像、某巨大アダルト動画サイトに全てアップロード致しますね』
「なっ! ま、待ってくれ!! それだけは止めてくれ!!」
 樹は焦り制止を叫んだ。勿論他の二人も同じ気持ちに違いなかった。
 炎――それは部屋に燃え盛っている中央のそれを示しているのだろう。それを消火する――どうやって?
「……分かりました、火を消せば、データも消してくれるんですよね?」
「イツキ! そんなの嘘に決まってる! 俺たちをまた好き勝手な罠に仕掛けるための体の良い口上だ!!」
「トウマ……でも、従うしかないだろ……? こんな映像、他の誰かに見られたら――!!」
「………………。」
 斗馬も弥代も黙り、炎がパチパチと立てる音だけが部屋に響く。
「それで……どうやって消せと? この部屋に消火栓はあるのか」
 弥代の疑問は最もだった。それらしきものを探すも、正方形の小部屋に消火のための装置や、まして水道すらない。そんな部屋でどうやって火を消せというのか。
『お三方、困っているようなのでヒントを教えましょうか?』
 スタッフのアナウンスに、お願いしますと樹が返答した。
『答えは簡単です――水、出ますよね? 皆さんがお持ちのホースから……』
「………?」
 ホース?と樹が裸の身に目を落とす――そこで目に入ったモノ、それは確かに……。
「っ……ま、さか……」
『はい、その通り、皆さんの聖水、端的に言うとオシッコで消してください』
「てめッ……ふざけんのもいい加減に……!!」
『三人同時に台座へ上がって放尿、そうすれば魔道炎はたちどころに消えるでしょう……ここからは、三人の協力なしにはクリアは難しい……まさにそんなミッションをご用意しました」
「……貴様らの黒幕……このイドラスフィアの悪趣味な主は誰だ!!」
『さあて……最下層まで辿り着けば会えると思いますよ、では、健闘を祈ります」
 それきり、ブツッ、とミラージュスタッフからの通信音は途絶えた。

「……ションベンで火を消せ、か……現役のタレントになんつー課題だよ」
「……………。俺はやらん……断じて」
「でも……それじゃあ……」
 依然として天井のモニターは三人のあられもない姿を流し続けている。顔にも性器にも、一切のモザイクは見受けられず、裏ビデオ以上に悪質で強烈な仕上がりであった。
「……ッ……反吐が出る……」
「まあ、ヤシロの気持ちも分かるぜ、芸能人はトイレに行かねーもんな」
 はぁ、とため息を付きつつ斗馬がボリボリと頭を掻く。でもよ……と視線を反らしつつ、斗馬はまた口を開いた。
「俺、けっこう前からションベン溜まってて」
 突然の告白に、………俺も、実は……さっきから、と樹が続ける。もともと射精後はかなりの確率で尿意を催すのが自然の摂理である。にもかかわらずここまで進んでくる道中にトイレは一つも無く、つまり三人共、膀胱内にたっぷりと尿が溜まっているのは明白だった。
「弥代も溜まってるだろ? なぁ、ここは腹くくってスッキリ出しちまおうぜ、なあ」
 男同士遠慮すんなよ、とあくまで気楽に考えようと促したつもりの斗馬に、弥代は軽蔑するような冷たい眼を向け、押し黙ってしまった。
「うわ、怖……頑固だな……つっても……」
 話す斗馬が、そわそわと股ぐらを押さえ始める。じっと見つめる樹に、居心地悪そうな視線を送る。
「いや、話してたら気が緩んじまって……俺、けっこー、ヤバくなってきた……」
「ここで本当に……出すつもりなのか、トウマ」
「っ………」
 こくり、と斗馬が頷く。だが、弥代はそっぽを向いて微動だにしない。スタッフは三人同時に火へ小便する必要があると言っていた――。ぐるぐると回る考えに、どうしようかと樹は葛藤していた。その時、おもむろに斗馬が台座の一つへ向かって歩き出した。
「あっ、俺、もう漏れそうだったし……!!」
 そう言って、斗馬はついに台の上に上がると、炎へ向かって遠慮なく放尿し始めた。
「と、トウ……!」
「赤城斗馬!!」
「お前らも! 早くしろよ!! 炎上すんだぞ!!」
「う……、」
「………。」
 樹は葛藤していた。いくら男同士とは言え相当に恥ずかしい。しかし、今までの痴態が全て明るみに出るなど芸能人……いや一人の男子校生として、そちらの方が耐えられない。
 やるしかない……と、樹も歯を食い縛りながら石の台座に上がる。燃え盛る魔道の炎が身に照り付け、熱い。本能的に感じた危機感に、頭で考えていたよりも身体は反射的に緊張を緩めて生理現象を開始させた。
 あっと思うやいなや、開いた尿道から、次々と尿が迸っていく。
「ヤ、ヤシロも………」
「断る!! 断じて!! 断る!!!」
 弥代は、台に上がって無様に放尿する二人の姿に思わず顔を覆った。理性、羞恥心、芸能人としての矜持。それらを全て吹き飛ばしてしまうような要求を、今、ここで……遂行しなければ?
「うっ、あっ、もう止まりそ……!!」
「ヤシロ!早く………頼む!!」
「くっ………!!!!」
 眉根を寄せ、苦渋の表情をしつつも、弥代は台に上がると、火柱へ向かって腰を突き出し、そして……。
ジョロロロロ―――と弥代のペニスから黄金の滝が迸った。
「や……やった!!」
「やったぜ!!ヤシロ!!」
「ッ――――!! 屈辱だ……………!!」
 しかし弥代の意に反して膀胱に溜まっていた大量の小水は、激しくホースで放水するかの如く炎に向かって放射され、瞬く間に炎が小さくなっていく。
「いいぞ! あと少し……!!」
 三人の男たちがジョロジョロと音を立てて放つ黄金水が、炎の中心で一つに交わり、落ち……そして、ようやく魔道で作られた炎は沈下した。
「こ、これで流出が防げる……!!」
「良かった……はぁ……」
天井のモニターの映像が、消えた炎に呼応して黒い画面に変化したことを確認し、樹はほっと胸を撫で下ろす。

「ところでヤシロ、溜まってたんだな……」
 既に用を足し終えた樹と斗馬を前に、弥代はまだ台座前で煙を上げて燻る火種の残る燭台に向かって、小便を続けていた。
 何ともいえないアンモニアの香りが、煙と共に部屋に漂っている。
「黙れ!! こちらを一瞬でも見れば殺す!!!」
「あー、ハイハイ」
「オシッコなんて今更だけどね……」
 こうして恥辱を乗り越えた三人は、奥に出現した新たな階段へようやく向かうことができた。


地下十三階

「今度は何だ……」
 さっきのプライドをへし折るようなミッション内容を引きずっているのか、鬱陶しげに弥代が呟く。先程の部屋内でミラージュは、ここからは三人で力を合わせて攻略を――と言っていたが、険悪な空気を醸すこの状態は致命的であった。
 そんな中銀の装飾で彩られた扉を開けて訪れた部屋は、これといった仕掛けの見られない正方形の空間であった。
 中央にミッション内容を記した電光パネルが光っている。樹はそこへ近付くと、義務的にその内容を読み上げた。
『女子禁制☆マスかいて三人の絆を高めよう!!』
「絆ね、絆…………ハァ!?」
 そのミッションタイトルを聞いた斗馬が、驚愕した後、……海よりも深い溜息を吐く。
「マスをかくとは」
「マス……マスターベーション……つまり、三人で仲良くオナニーしろってこと!」
「?」 
「あーあ、ついにお前らとチンポ扱き合う仲になる日が来ちまうとは……」

「貴様!恥を知れ!
「いや!お前だってオレにコかれてバカでっかくしてるじゃねえかよ!」
「ふ……二人とも集中してくれ……! 早く終わらせようこんな事……」
「んぐっ
「い、いちゅっ……! 先っぽそんな擦んなって!」
ご、ごめんと樹が手を緩める。
「アッ……! オイ、も、出そう……! ア――……駄目だもっとこう…! 裏スジ責めて……」

 中々タイミングが合わず、絶頂の波を逃しては疲弊し、しかし寸止めを繰り返せばその度にむらむらと焦れったさが燻っていた。
「も、無理ぃ…! キンタマが苛々する……!」
「そうだ……トウマ、ヤシロ……イきそうな時はお互い合図しよう」
「ンッ……! そうだな」
「蒼井樹……イくとは何だ」
「ハァ!?」
「トウマ!!……ヤシロ、出るときの事だよ」
「出る……精液がか? 射精のことか」
「知ってるじゃねえか……」
「そう……じゃ、扱くリズムを合わせて……」
 三人はもう一度、高みへ昇るために各々の手に握った仲間の陰茎を扱くことに集中した。
「あ――タマ、上がる……も、ちょい幹、キツく擦って……」
「もっと手の速度を速めろ! そう…ッ 先まで、長く……アッ」
「ンッ、良いよ、二人ともっそのままのペースでッ」
 アア❤と樹が上げた甘い嬌声に刺激されたのか、斗馬と弥代も喉奥から快楽の喘ぎ声を重ねる。樹は高め、弥代は低音、その中間に斗馬の喘ぎボイスのハーモニーが出来上がると、快楽を追うことに成功した三人は、ついにその時を迎えようとしていた。
 きゅうう……と会陰の上でそれぞれが持つ玉が精嚢を押し上げ、いよいよ精管に精液が装填され始めた。
「「「イク……――ッ!」」」
 合図を受け、チンポを握るそれぞれの手が仕上げとばかりに巧みに動き、三つのペニスは鈴口から勢いよく白濁液を発射した。
「アァァァ――――!❤❤❤」
「や、アッ❤ アッ、アァ――!❤❤」
「――――ッ!! エクセレント――――!!❤❤❤」
 ……と、その後の旋律は異なったが、溜まりに溜まったものを吐き出すのは最高に気持ちが良いことに変わりない。
 全身にしっとりと汗を浮かべながら、ミッションクリア出来たこと、そして三人の男達の中には、やりきったという達成感があり、妙に清々しい心持ちであった。このメンバーなら何を無茶ぶりされようが大丈夫、そして真に分かり合えるだろう……という雄特有の謎の一種の連帯感が胸中に生まれていた。
 ――ただ、二度とやりたくはないなという弥代の言葉に、樹と斗馬も深々と頷き合った。
地下十四階

 階段を下りると、そこに現われたのは樹達が待ち望んだワープポータルだった。しかし……。
「ここへ来て、二択……道は二つにひとつ……」
「さあ、どちらを選ぶ、蒼井樹」

「そうだな……」

白く光る右の道

黒い闇が燻る左の道

 











 進んだワープポータルを抜ける。その先には――――見覚えのあるスタジオの扉。
 まさか、と瞳を擦って確かめるが、紛れもなくB1Fの表示がされている。
「そんな――」
「マジか――」
「徒労だったというのか……全て――」

 再び地下への探索を余儀なくされた三人は絶望感に打ちひしがれながらも、それでもこのイドラスフィアを攻略するには一からやり直すしかないと、諦めて階段を下りていった――

 スタートへ戻ってやり直す

 コンティニュー
 






















地下十五階

(いよいよ、か……)
 闇色のワープポータルを抜けて辿り着いたここが、おそらく最後の部屋なのだろうと、樹は確信していた。
 満身創痍で地下へと進み、現れたのは金の装飾に彩られた巨大な扉――。
「これは……舞台……」
 古代ギリシアのような神殿の様式をした部屋の中央には、白い石で作られた円形のステージがあった。その中央に続く階段の上には、これまでの起動装置ではなく、竜の顔が彫られた祭壇が設置されていた。
「良くここまでたどり着いたね、フォルトナエンタテインメントの蒼井樹君……だったかな?」
 思わぬ声の主に、樹たちは目を見開いた。
「や、ヤツフサさん……!?」
「クックックッ、それにしても、三人ともそんな素っ裸で恥ずかしくはないのかい?
「こ、これは……その……!!」
 慌てて前を隠して赤面する樹に、ヤツフサはハハハと嘲った高笑いをする。
「蒼井樹……気にするな、恐らくヤツが……」
「黒幕、だよなァ、あんた……!!」
 樹に寄り添うように弥代と斗馬が歩み寄る。その瞳は怒りに満ちていた。
「……ご名答。流石、素人とは違うね、キミたち……まあ、ミラージュの力を封印されている今の状態じゃ、虫ケラ同然だけどねェ」
「貴様……!!」
 ギリ、と弥代が目の前の軽薄な男へ殺意を露にする。だが、男のいう通りナバールは何度呼ぼうと弥代へ刃を与えてくれない。ならば――
「おらァッ!!!!」
 先に動いたのは斗馬だった。ヤツフサの顔面目掛けて拳をぶち込んだのだ。
「グヘェッ――」
 いとも簡単に、ヤツフサは顔面を醜く歪ませながら大の字に倒れた。――筈だった。
『我が依り代に手荒な真似をされては困る――』
「ぐあっ!?」
 追撃しようとヤツフサへ再び拳を振りかざしていた斗馬が、何らかの力によって後方へ吹き飛ばされる。叩き付けられそうになった身体を、危ない!と樹が受け止めるが、勢いを押さえきれず二人は床に倒れた。
「蒼井樹!赤城斗馬! ……何だ貴様は!!」
『我が名はガーネフ……くくっ、お前か、あの哀れな男の小倅は……』
「!……貴様、父さんの……!!」
 カッと瞳を怒りに赤く染めた弥代は、ガーネフを倒さんとヤツフサの横に現れたその年老いたミラージュへ拳を突き出した。
『無駄よ!小童が!!』
「ぐあっ!!」
 ガーネフの放った衝撃波で、弥代も樹たちの方へ人形のように吹き飛ばされた。切れた口内に鉄の味が広がる。
『フッ、小僧どもが――こうしてみすみす自らの優れたパフォーマをあの方のために差し出しにやって来たのだ なんと、愚かなものよ』
「何だって?お前たちは一体何のためにこんなイドラスフィアを!」
『……まだ分からぬか? よかろう、では最後の試練、試そうではないか――貴様らがあのお方に相応しいパフォーマを宿しているのか――』
 ガーネフはそう云うと、樹たちへ嗄れた小枝のような指を伸ばし、魔方陣を描き出す。
『禁断の呪われし暗黒魔法――くくっ、今回貴様らに施したのは亜種のものだ その呪縛を見事解き放てれば、お前達をメディウス様の供物として捧げてやろう――』
 ガーネフは目深に被ったフードからニヤリと口の端を吊り上げると、ヤツフサと共に転移魔法を発動させた。みるみるうちにガーネフの姿が暗黒の霧に溶けていく。
「ま、待て!! 逃がさ……ンッ!!?」
 立ち上がろうとした弥代は、下腹部に強烈な熱を感じた。一体何事だと見れば、臍の下――性器のちょうど真上の位置に、奇妙な紋様が浮かび上がっている。
「何だよ……これ……ッ……」
「う……ッ……熱……ぃっ……!」
 斗馬と樹にも、同様の紋様が同じく性器の真上に刻み込まれていた。黒い入れ墨のように皮膚に浮かぶそれは、このイドラスフィアにやって来た時に見たピンクの靄と同じ色の光をうっすらと放っている。思わず手でかきむしるが、全く消える気配もなく……ただじわりじわりと下腹部に熱が溜まっていく感覚があった。
「こ、これって……まさか……」
 言いかけた斗馬が悔しげに顔を覆う。どうした、心当たりがあるのかと問いかける弥代に、この形、もっと良く見てみろよ!と吐き捨てるように斗馬が叫ぶ。
「淫紋だ……これ……」
「いん、」
「紋………それは、ッッ!!」
 また熱を高め出す紋様の力に、弥代が顔をしかめる。形……形は……と見れば、中央にハートカップのような印に、小さな持ち手が左右に伸び、それを禍々しい刺のようなものが覆っている。他二人のものも同じだった。
「淫紋はなぁ……子宮のマークだよ!俺達、メスにされたってこ、ンン……❤」
「め、メス……❤女子と同じ……じゃあ……」
「ッ……こうしてるだけでも腹が疼いて仕方ねぇ……ッ……」
「ガーネフめ……」
 ど、どうすれば――と、樹は改めてその舞台を見回した。とにかく、中央から伸びる階段の先へ行くしかないのかもしれない。というか、先程からそこから呼ばれているような……そんな気がしてならないのだ。
「……行こう……こんなところで、終わる訳にはいかない」
「蒼井樹……ああ……」
「たとえ何があっても……俺達三人でこんな場所、抜け出してやるぜ!」
 そうは言うものの、淫紋によって力の入らない身体をふらふらと引きずるようにしながら、三人は壁にしがみつき、何とか階段を下りていった。

 やがて樹達の前に現れたのは、竜の頭のレリーフが彫られた禍々しい祭壇だった。
「う、ううっ……疼きが……止まらない……」
「腹が……くっ……ンン……❤」
 その祭壇へ近づくほどに、まるで淫紋が吸い寄せるように三人にある欲求を募らせていった。
「身体を……捧げる……」
「……竜……メディ、ウ、ス……?」
「っ、こ、これは………」
 祭壇には、竜の鱗に覆われた三本の棒状の突起――ディルドが、三叉になって生えていた。隆々とそびえるそれを目にした瞬間、目の色を変えて樹たちはディルドから立ち上る瘴気を呼気一杯に吸い込み、堪らずそれを口に含もうと、我先にと舌を伸ばした。
「あ……ハァッ……レロレロ……❤チュッ❤」
「ほ、欲しいッ…❤❤ムグッ……ンン…❤❤❤」
「ジュルル……❤ンチュ、ぁぶ……❤❤❤ち、チンポ……❤❤❤」
 淫紋は樹たちの身体に完全に染み渡り、三人は人が変わったような目付きで一心不乱に祭壇のディルドを舐め回しながら、空いた手でいきり立つペニスを扱き、慰めていた。
 しかし、どんなにペニスの弱いところを責めても、高まった快感は射精にまで至らず、寸止めされてしまう。これも淫紋の効果で、三人はもはや男性子宮――の名残である前立腺への刺激でしかイケない身体になってしまっていた。
 そうとも知らず猿のように激しくマスをかき続ける斗馬、腰を振って祭壇の側面にチンポの表面を擦り付ける樹――
「アッ、アンッ❤❤もう、入れ、入れて……チンポ………❤俺のメス穴にぃっ………❤❤❤」
 ふと、弥代が立ち上がって祭壇の上に長い脚を伸ばし、ディルドの一つを跨ぐと先程散々エネマグラで開発されたアナルを指で開き、子供の腕はありそうなほどのそれを咥えんと、腰を落とした。グプゥ……と唾液にまみれてぬるぬるの先端が、弥代のアナルの襞をいっぱいに引き延ばしながら魔羅が直腸にずっぽりと埋まる。
「アッ!!ア――ッ!!❤❤さ、先っぽ、入ったァ……❤❤❤え、エクセレ……トぉっ❤❤❤アアッ❤❤❤❤❤」
 ビクンッ、と大きく弥代が跳ねる。先端部分を挿入しただけで、弥代はイってしまっていた。溜まっていた精液をブビュルルッと高く吹き上げ、甘美な絶頂の時を味わう弥代を認めた樹と斗馬の目に、羨望が滲む。
「め、メディウしゅさま……❤❤俺にも……チンポ……おチンポの❤❤お恵みを……❤❤❤」
「ず、ズルいぞッ❤俺もっ❤❤早くぅ……イきたいっ❤❤チンポでイカせてくらさいっ❤❤❤」
 急いで斗馬が舐めしゃぶっていたディルドを跨ぐと、メリメリと太い糞を垂れるような体勢で脚を踏ん張りつつ、暗黒竜のディルドを胎内に納めようとする。
「ひっ、ひはっ……あとちょ、とぉ…!!❤❤アッ、入っ……るぅぅ!!!!❤❤❤❤❤」
 ずぽん、と一気に先端が埋まった衝撃で、斗馬もまた弥代と同じく顎をのけ反らせてパンパンにぶら下がっていた玉袋から精子を送り出し、噴水のように撥ね飛ばしていた。
樹は、快感に喘ぐ二人の横で必死でディルドを挿入しようとアナルの襞へあてがっていたが、大きすぎるせいでなかなか入らない。
「ひっ……あァッ!!!!❤ おチンポが、入らない……ッ 何で、俺だけぇっ……!!!! 俺もイきたい❤❤❤チンポでびゅるびゅる射精したいッッ!!!!」
「い、いちゅ……❤❤頑張れ❤❤❤がんばれ❤❤❤」
「あ、焦…りゅ、な……❤❤❤ちから、抜いて……そう……❤❤❤いき、吐いてッ❤」
 斗馬、弥代が樹の左右の脚を抱え上げ、大きく開く。全身の体重をかけたことで、限界まで伸ばされた樹のアナルの中にじりじりとメディウスのディルドが埋まり……そして……
「ンア――――!!!!!!❤❤❤❤❤はいっ、たァァッッッ!!!❤❤❤❤❤」
 ついに樹の胎内に、暗黒竜のペニスを模したディルドが挿入され、樹は歓喜の叫びを上げた。瞬間、砲身からビュ――ーッと精液が一直線に吹き上がり、樹の顔にシャワーのように白濁が降り注ぐ。ただ、これで終わりではなかった。
「ま、またイッ、❤❤❤イクッ!!!❤❤❤イクゥッッ――――!!!!!❤❤❤❤❤」
「お、おれも❤さっきから❤❤❤イキっ、ぱなし❤❤❤だぞッッ!!❤❤❤オ、オォンッ❤❤❤」
「ち、チンポびゅくびゅく❤してッ❤❤❤止まッ❤ねェ❤❤❤アッ、もぉッ❤❤キンタマ❤空になりゅぅ❤❤❤」
 精液が降り注ぐ度、ブォン……ブォン……とディルドの中央に嵌まった黒い竜の玉が、まるで命を注がれるように赤い光を放ち、それに呼応して三人の下腹部に刻まれた淫紋もピンクの光を強めていく。子宮の紋様に似たカップにも赤い色が満ちるように溜まりゆき、そして……
「ァア――――――――!!!!!!溢れりゅうぅぅ!!!!!おチンポ様に突かれてぜんぶ出ちゃうゥゥゥッ!!!!!」
「く、くるっ!!ほ、本気のアクメくりゅゥゥゥッ――――!!!!!い、一流芸能人ッ❤❤❤メスイキしゅりゅゥゥゥッ!!!!!」
「ァア――――!!!!!!も、なぃぃ!!!!!チンポミルクなぃのにぃぃぃッ――――ー!!!で、出ちゃ――――ー!!!!!」
 断末魔を上げるように叫ぶ三人は、ディルドの全てを尻の中に飲み込んだことで三人同時に本気のアクメを迎えてしまっていた。
 精液を放出しつくして打ち止めになっていたペニスは、プシャ―――――ッと輝く潮を吹き、聖水となり暗黒竜の祭壇をびしょ濡れにしていく。潮の放出に伴い子宮に満ちていたピンクの光が徐々に空になったことで、紋様自体がが薄くなり、ようやく消えた。
 ガーネフの言ったメディウスに捧げられるほどの強力なパフォーマ……つまり人間の持つ精力の高さが示されたことで、無事に淫紋の呪いは解呪された。

 三人はこのミッションをクリアしたことで、ついに元の世界――ブルームパレスへのワープに成功する。
 しかし幾度とない快楽にイき果てた三人は祭壇の上で折り重なるように倒れ、意識を失っていた……。

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