餌食
「…………………。」
渋い顔でラフィンは偵察を続けていた。腹の奥には、またあの不快な圧迫感がある。
先日ナロンの前でしでかした信じがたい『出来事』以来、まともに大便を排泄することは無かった。いや、出来なかったのだ。個室を前にすると嫌でもあの記憶が蘇り、ラフィンは意識的にそれを避けてしまっていた。
もちろん、ナロンとも一言も口をきくどころか、あれから顔を合わせてさえいない。不穏な噂が何も上がって来ないことから、ナロンはそれを誰にも言わずに留めていてくれているのは分かったが。
しかしラフィンの心中には、深い傷が刻まれていた。
それでも、以前と同じような状態になってしまった身体は限界を訴えていた。
(仕方ない……兵舎に戻ったらすぐにでも済ませてしまおう。いい加減立ち直らねば、行軍に支障が出るな……)
はあ、とため息をつくラフィンの顔に暗い陰が落ちる。
そんな時、部下の一人が前方に一体の騎兵を発見しましたと告げてきた。帝国軍か、と険しい声で聞き返すと、どうやら違うらしい。
「何者だ?」
ラフィンは部下の前へ出ると、林の切れ目にぽつんと光る鎧に目を留めた。
なるほど、確かにあんな分かりやすい場所に敵兵は姿を現さないであろう。
高度を徐々に下げると、その兵が何かしきりに叫んでいることに気付いた。
「…………さん…………!」
(!)
あの声は。
「……ラ…………ん!……………ラフィンさん!……」
下(地上)からの声は、間違いなく俺を呼んでいる。
あの高い声……やけに耳に残る声の主は、今ラフィンが最も顔を合わせたくない人物だった。
「……隊長、ナロン殿が呼んでるみたいですが………」
隣の部下がそう言った。言われなくとも分かっている。
(……無視する訳にもいかない…………か……)
またひとつため息をつき、ラフィンは部下に偵察を続け、日が落ちれば解散するよう指示を出すと、愛竜を巧みに操り、急降下した。
生い茂る緑の合間に、ひときわ輝く黄金の鎧。そのシルエットが大きくなっていく。
彼はやはり、単騎のようだった。
「ラフィンさん!」
地上すれすれにラフィンが滑空すると、ナロンは目を輝かせる。
「……何の用だ!」
しかしナロンは答えることもせず、降りてくるようにと、地上で手招きを繰り返している。腹部に赤色が見えた。
(怪我でもしたのか……?)
ラフィンは竜の鞍に巻きつけてあった携帯袋から薬草をつまみ出すと、それを片手に降り立った。
動くとまた腹の奥が疼いたため、ラフィンは空いている方の手を腹部に当てさすりつつ、ナロンに近づいた。
そして薬草を渡そうと手を伸ばした次の瞬間、その手をぐっと引き寄せられた。
「つかまえた、ラフィンさん」
「!?」
不意を突かれたラフィンは引かれるまま前のめりになる。
視界に広がる、ナロンの顔。
それは獲物を捕らえた蛇のような、残忍で狡猾に歪んでいた。とても、普段軍内で見せるナロンの表情からは想像出来ないようなものだ。
「駄目じゃないですか……ラフィンさんともあろう人が、こんなに簡単に懐を捕られてはいけませんよ」
ニ………とナロンの口角が上がる。
そこでやっとラフィンは、ナロンが怪我も何もしていない事に気づいた。赤色は彼の腰巻の色だった。
怒りが込み上げる。
「……ふざけるな!こんなことをして、一体どういうつもりだ!」
まれた手を振りほどこうとするラフィンだったが、ナロンの力は意外なほど強い。
「逃がしませんよ」
そうだ。今、目の前にいるのはヴェルジェの新米兵士ナロンではなく、ゴールドナイトの称号を受けたナロンだとラフィンは思い立つ。
既に技能も自分と同等、……いや、最近はそれ以上の力を持ちつつある。
「………どうするつもりだ」
怒りを抑えながらも、明らかに不快の念を込めた声でラフィンは問うた。
「僕、ラフィンさんが欲しいんです」
「何だと?」
「ずっと欲しかったんです。初めて会った時から。でも僕には貴方に値する程の力が無かった。」
ナロンが何を言っているのか理解出来ない。
「…………止めろ」
「でも今は違う。今やっと貴方を捕まえることも出来た。………だから」
否、ラフィンはそれを理解したく無かった。
「冗談は止めろ!」
「っ!」
ラフィンはナロンを突き飛ばすと、後方に控える愛竜へ向き直った。
「……逃がしませんって、言いましたよ?」
「!!」
鳩尾に鋭い痛みが走ると共に、視界が暗転する。
そのまま、ラフィンの身体はナロンの腕に崩れ落ちていった。
ラフィンが目を覚ましたのは、時間にしてほんの数分後だった。
「……」
薄く開けた目に、忌まわしい金色が光る。
「目が覚めたようですね、ラフィンさん。」
目前に立つナロンが嬉々として口を開いている。
「……ここは…………」
ラフィンが辺りを見回そうとした時、自身に起こっている異変に気づいた。
「なっ…!」
ラフィンは一糸纏わぬまま、むき出しの土の上に座らされていたのだ。
慌てて動かそうとした手と脚が、びくともしない。おそらく縄か何かできつく縛られているのだ。
「ほ、解け!ナロン!」
「………あぁ、ようやく名前呼んでくれたんですね」
必死の形相で身を捩るラフィンを後目に、ナロンはうっすらと笑みを浮かべつつ、近づいていく。
「馬鹿な真似はもう止せ!見るなっ………!」
何も身に付けていない上、両足を広げたままの、身体の何もかもを完全にナロンに向けて晒す格好で固定されているのだ。いくらナロンが同姓でも、羞恥を感じずにはいられない。
「………いいんですか?そんな態度で。」
くすくすと笑いながら、ナロンは怒るラフィンの顔の輪郭に手を這わせていく。
「お願いする立場じゃないんですか?ラフィンさん」
「っ…………!」
かあっと、怒りと羞恥の混ざり合った赤がラフィンの顔を染めた。
「…………くそ………解いてくれ…………っ……」
「嫌です」
ナロンの手がラフィンの頬をいとおしげに撫で回している。それから逃れようと、ラフィンは懸命に顔を背けるのがナロンには堪らなく可愛く映った。
「さ、触るなっ……」
「嫌です」
ラフィンがこれ以上動かないように両手で顔を抑えると、ナロンは啄むようなキスを、薄い唇に何度も落としていった。
「っ…………っう…………ん……」
男相手、しかも自らの嫌っている男に口づけされる気持ち悪さに、ラフィンは思わず上げてしまいそうになる。
しかしその一歩手前で、腹が悲鳴を上げた。
「っぐ…!」
腹から響くゴロゴロといった雷の様な異質音は、ナロンにも聞こえる程の大きさだった。
夕暮れ時の冷えた大気に曝された腹部の表面からは急速に熱が奪われ、いやが上にもラフィンの排泄感を高まらせていた。
ナロンが小さく窪んだ臍の辺りに手を添える。
「ずいぶん冷たくなってますね。何か着るものを取ってきましょうか?」
あくまで笑顔のまま、ナロンは告げた。もちろん服も鎧も剥ぎ、こんな姿で拘束したのはナロンに違い無かった。
ナロンの意図が全く分からない。
だが、今のラフィンはそれに縋るしか無かった。
「………さっさと取って来い……!」
小さく振動を続けている腹部が、もうそれほど時間がないことを告げている。
「ダメですよそんな口調じゃ。さっきも言ったでしょう、ラフィンさんは僕にお願いする立場だって。」
「この……下衆が!」
「嫌なら、別に僕はこのままでも構いませんよ?」
笑顔を崩さないナロンに苛立ち、ラフィンは奥歯を噛み締めた。しかしこのままでは圧倒的にこちらの分が悪い。
「……俺の服を……取ってきて………くれ」
「まだ言葉が悪くないですか、ラフィンさん。それに、服を取ってきてどうして欲しいのかも言わなきゃ、伝わりませんね」
「っ………。……服を……取ってきて……元通り、着せ…………………く、………下さい」
情けなさと腹立たしさに身を焦がしながらも、ラフィンは屈辱的な言葉を述べた。顔を見なくても、ナロンがニタニタと嗤っているのが分かる。
「いいですよ。でも」
ナロンは懐から銀に光るパウチを取り出すと、その中から白い錠剤のようなものを摘み出した。それを、ラフィンの奥まった場所で震えている蕾の入り口にあてがう。
「っ、なっ……何をするっ…!」
つぷ、とそれを粘膜に押し込むと、後は自然に奥へと飲み込まれていった。
「……ラフィンさんが早く苦痛から楽になる薬ですよ。では、服取って来ますね。あ、ついでにラフィンさんの配下の方々も呼んできます。あなたを心配してると思いますから」
「なっ、待てっ………くっ!?」
突然今までとは違う苛烈さをもったさし込みが襲い、ラフィンは呻いた。その様子をにっこりと見やりながら、ナロンはラフィンの静止も聞かず行ってしまった。
どっと冷や汗が吹き出す。
確かにナロンは「部下を連れて来る」と言った。
冗談じゃない。こんな姿を、ナロンはもとより部下にまで曝すなど考えられないことだった。
しかし手足の拘束をどうすることも出来ないことは明白である。焦りがつのり、鼓動が早まった。
(ぐっ…………)
先ほどナロンに入れられた怪しい薬のせいか、腹部の振動はひっきりなしに続いている。それが内容物を吐き出そうとする動きだと思うとラフィンはぞっとした。
便意はかつて感じたことの無いほど高まっている。
足さえ閉じることを許されないラフィンにとって、それは地獄の責め苦だった。加えて、先ほどのナロンの言葉はラフィンにとっての死刑宣告のようなものだ。
歯を食いしばり、只々耐えるラフィンの全身に脂汗が滲み出した。肌に浮かんだ水分は外気によって冷やされ、ますます体表面の温度が奪われていってしまう。
「うぅっ…………!」
また急激に襲った波に、ラフィンは苦しげに呻いた。
出口のすぐ上に、固く質量を持ったものを感じるまでになっている。それが出口をこじ開けようと激しい圧力をかけてきているのだ。
もはや、気を抜けばそれまでだった。
ハァハァと荒く吐く息が辺りに響く。
「っ……く…………………」
何とか襲い来る波をやり過ごし、ラフィンはそこに再び力を入れた。しかし逆に余計な力まで加えてしまったらしく、弾けるような高い破裂音と共に微かなガスが漏れ出した。
「っ!」
慌ててそれをせき止めようとするが、わずかな量にもかかわらず卵の腐ったような臭いが鼻を掠め、ラフィンは顔を顰めた。
(臭い…………)
こんな臭いをさせれば、自分が何をしているのかすぐにばれてしまうだろう。
しかし、それは夜風に乗り、瞬く間に周囲に広まっていく。羞恥で身が焼ききれそうだった。
辺りはすっかり暗くなっていた。
排泄欲は依然として高まるばかり。
さらに都合の悪いことに、肌寒い風のせいで尿意まで催してしまっていたのだ。前後に感じる圧迫感。
そして、追い打ちをかけるように荒れ狂う便意の波が襲った。
「くっ!う………」
(もう、駄目だ………っ………!)
その時だった。
茂みの奥がガザガサと音を立てたかと思うと、幾つかの黒い人影が現れたのだ。
自分を呼ぶ声さえ微かに聞こえてくる。
「!」
ラフィンはその場で凍りついた。その声は、紛れも無く部下のものだったからだ。
「隊長ー!ラフィン隊長?」
「聞こえていたら返事をしてくださーい」
「そっちにはいたか?」
「いや………」
口々に自分を探す部下たちに、ラフィンは気付かず立ち去ってくれることを祈るばかりだった。
(来るな…………来るなよっ……)
「……こっちにはいないみたいだ」
「じゃあ向こうの方か?」
ラフィンの願いが通じたのか、足音と声が遠ざかる気配がして、少し緊張を解いた時だ。
再びガスが出口を圧迫したのだ。
「あっ…………!」
思わず声を上げたが、時既に遅く、ガスは関を切って溢れていた。けたたましい放屁音と共に、さっきとは比べ物にならない程の悪臭が漂よった。
「ん? ……何か音しなかったか?」
(! 駄目だ…………っ)
「こっちからだ」
容赦なく幾人かの足音が近づき、ついにラフィンの眼前にある茂みが揺れた。
「く、来るなっ!」
咄嗟にラフィンが叫んだが、そのせいでかえって部下達に自分の存在を明らかにしてしまった。
「隊長!?こんなところにいたんですか!」
声を聞き、安堵した様子で部下の一人が茂みからラフィンの静止も無視して顔を出した。
「来るな………………ぁっ………!」
部下がラフィンの視界に映るのとほぼ同時に、空気を裂くような音が上がった。
「た、隊長………っ!?」
「おい、どうしたんだ」
部下たちは続々と茂みから現れる。ラフィンの視界が明るくなった。彼らは煌々と光るカンテラを手にしていた。
「あ…………ぁっ…………」
カンテラの光がラフィンに向けられ、ついにその姿が部下の前に曝されてしまう。
剥き出しの四肢を拘束され、秘部さえも余すところなく曝け出し、なおかつ放屁する姿を。
そのあまりの屈辱と羞恥に、もはやラフィンは自分を抑えることが出来なくなってしまった。
「ああっ!!見るな!見るなあっ!」
突然張り上げられた声に驚いた部下は、慌てて後ろを向いた。それでも、一瞬目に飛び込んできたラフィンの姿に皆動揺を隠せないでいた。今のは何だ、と目を白黒させるうちに、ラフィンの排泄は始まってしまっていた。
「っ………………!」
破裂音と共に、長くため込まれていた太い便塊が後孔を押し広げ、体外に露出していく。長い間溜め込まれていたせいか、押し固まったそれは岩のような固さを持っていた。
その後に繋がるものは適度な湿り気を帯びていた様で、汚らしい音を立てながら勢いよくひり出されると、宙を飛んで地面に落ちた。
そのことにラフィンが気づく前に、既に二つ目の塊が長さを伸ばし始めていた。
ゆっくりと、しかし確実に伸びるそれはあっという間に地面にたどり着き、にゅるにゅると折りかさなっていく。
「ぁ………ぁ……っ………………」
さっきの薬のせいもあるのか、排泄はなかなか止まらず、ラフィンはようやく訪れたその開放感にめまいすら覚えた。
不意に、水温が響く。
後ろを向いた部下達はそれが何の音なのか最初は気づかなかったが、ラフィンの押し殺したような溜め息と、独特なあの刺激臭で認識を余儀無くされた。
部下の一人が恐る恐るラフィンに目をやると、薄暗いそこには全身を僅かに震わせながら俯いているラフィンが、汚物を前からも後ろからも垂れ流しているという光景だった。
部下は息を呑み、動揺したまま動け無かった。
ラフィンにとってそれは悪夢より凄惨な時間であった。
排泄がようやく終わりに近づいた頃、男にしては甲高い声が聞こえた。……ナロンである。
「ああ、間に合わなかったんですね、ラフィンさん」
微笑を浮かべながら、カンテラを携えたナロンは部下たちの前へ近づいた。
「隊長の服は持ってきた?」
「は、はい、ですが…………」
「うん、いいよ。あとは僕が処理するから」
「は、はあ」
半ば強引に、ナロンは荷物を部下から受け取ると、兵舎に戻るよう指示した。
「あと、隊長の名誉にかけて、このことは口外しないようにね」
困惑しながらも、ナロンの言うことには逆らえないと感じた部下達は、そろそろと足早に兵舎へ向かって行った。
兵の姿が見えなくなると、ナロンは再び口を開いた。
「すごい量じゃないですか………そんなに溜めてたんですね」
カンテラを掲げて薄く笑みを浮かべるナロンに対し、ラフィンは耐えがたい羞恥を嫌というほど味わったせいか、憔悴しきったようにぐったりと俯いている。
「どんな風にこれをひりだしたんです?ねぇ、聞いてますか?」
カンテラを手近な枝に引っかけ、興奮しがちにナロンはラフィンに近づくと、顎を掴んで上向かせた。
「やめ……………」
久しぶりに見せたその抵抗に力は無かった。
「泣いてます?可哀想に」
「う……………お前が…………っ!」
構わず、ナロンはラフィンの口を塞いだ。顔をずらし、両頬に光る涙をも舐め取る。
「……僕にも見せて下さいよ」
そう言ってナロンは懐からあるものを取り出したかと思うと、素早くそれをラフィンの後孔に挿しこんだ。
「っあ!?」
冷たいものが直腸に流れる感覚の後、腸内に焼けるような痛みが襲った。そして再び、強烈な便意が蘇ってきたのだ。
「ぐっ…………!何………」
「浣腸ですよ。さて、何分我慢出来るでしょうね」
「うっ!………うう…………っ」
ラフィンの額には既に脂汗が光っていた。
先ほどの放出により炎症を起こしている蕾では、陥落は時間の問題である。
しかしラフィンは歯を食いしばり、それに耐え続けることを止めない。
ナロンにはそれが何とも愛おしく感じられた。
(ふふ……けっこう頑張りますね。どうせ耐え切れはしないのに)
諦めの悪いラフィンに、ナロンは手を伸ばした。
震える首筋をなぞると、胸の突起に指を這わせる。
「……乳首が立ってますよ?こんなに」
そのままぎゅっと摘み上げると、ラフィンは喉の奥から絞り出すような悲鳴を上げた。
「ひぐっ!!…………止め……っ…………うっ」
しかしナロンはその手中の果実を弄び続ける。
与えられる刺激はラフィンの神経をみるみるうちに緩ませ、ついに二度目の決壊を迎えてしまった。
突然下腹部から汚らしい音が響き、茶色く染まった液体が火山のように盛り上がった蕾から吐き出された。。
「あああっ!あぁ――っ!!」
ほぼ液状の水溶便が地面に向かってまき散らされていく。絶叫するラフィンを、ナロンは目を輝かせて見つめていた。
「あっ、うぁ…………ぁっ」
最後はぐじゅぐじゅ……と音を立て、チョコペーストのような便が溢れた。
ラフィンの下半身は飛び散った便で見るも無残に汚れ、悪臭を放っている。
彼はもはや自分がどんな状態なのか認識することも出来ず、只、ぼやけた思考で苦痛からの解放感に浸っていた。
だが次の瞬間、思いも寄らないような激痛が走った。
「うっ、ぐ…………!!っあ、うぁぁああっ!!!」
身体を二つに裂かれるような鮮烈な痛みに目を見開くと、そこにはナロンの顔があった。
まるで悪魔のような笑いを湛えた。
「あぁ……!すごい、ラフィンさんの中、熱くてぐちゃぐちゃして、すごく気持ちいい…………!」
ナロンは猛る自身をラフィンの汚れたそこに、慣らしもせずに突き入れたのだ。興奮したナロンがそれを伝えている。あまりのことに、ラフィンの思考は停止した。
「もう少し力抜いて下さい………。僕はいいですけど、後で辛いですよ」
「あっ、あ、ぁあ……………、ああっ……………」
拒む気力も体力も失ったラフィンを、ナロンは容赦無く穿った。汚物が周囲に飛び散るのも厭わず。
ラフィンの秘部は無残に裂け、血が流れ出していた。
「痛い?痛いですよね?ああ……でも僕は今、凄く幸せですよ」
熱を帯びたナロンの金の瞳が、ぎらぎらと光る。
苦痛に仰け反ったラフィンの喉元に、ナロンは生暖かい舌を這わせ、愛撫した。しっとりと汗ばんだそこを堪能するように。
しかしそれは、首を噛み切られるかもしれないと言う恐怖となってラフィンに襲いかかる。
「っあ……ひ…………っ、うぐ…………」
耐えられないといった呻き声がラフィンから漏れる。
ナロンは相変わらず、ラフィンの内臓に自身を押し込むように腰を動かしていた。
「ずっと、あなたをこうしたかったんです、僕は……!……」
「っ………!!」
ナロンの凶器が深々と内壁を抉った。
瞬間、ラフィンは糸の切れた人形のように力を失い、ガクリと項垂れた。
それに気づいているのかいないのか、ナロンは反応しなくなったラフィンの身体をなおも蹂躙し続け、やがてその昂りを注ぎ込むに至った。
ナロンの荒い息が、徐々に小さくなっていく。
「……ハァ……。……ふふ……これくらいで気を失っては駄目ですよ…。ラフィンさんともあろう人が……」
呟きは、崩れ落ちるラフィンの上を通り過ぎていった。
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