虐げる者・虐げられる者

『騎士への条件』からの続編です。
無事に騎士叙任を経たクライスの運命は…的な。別名リュナン様によるフレッシュマン養成研修編。
やってることは強制オナニーです。



先日の一件後、リュナンはまたクライスを呼び出していた。今度はあの奥まった部屋ではなく、自室へ。
窓の外からはぽかぽかとした陽光が差し込み、薄桃色の花びらが風に揺らいで舞っている。
その春も、ラゼリアでは士官学校を出た新たな騎士達の叙任式が行なわれたばかりだった。
赤銅色に光る真新しい鎧に身を包んだ彼の姿を思い出しながら、その訪れを待つ。
あの色の鎧を纏う者は、すなわちラゼリアの若き公子リュナンの近衛候補ということを示していた。ラゼリアの士官学校を成績優秀で卒業し、家柄や素行も言うことがなく、リュナンと年の近いクライスがそれに選ばれたのはごく自然な事だった。
(もう一人…いたけどね、確か名前は…)
と、彼のすぐ隣に立っていた青銅の鎧を纏った青年のシルエットを思い出そうとした時、扉をノックする音が響いた。
「リュナン様、――クライス、参りました」
「ああ、入ってくれ」
入室を許可すると、扉が開き彼が現れた。失礼しますと一礼し、扉の前にすっと立つ。
しかし扉前や部屋の中に側仕えの兵士や給仕が誰一人として居ないことを確認した彼は、少し所在無げに視線を彷徨わせていた。
「鍵をかけて、ここへ来てくれ」
「はい…」
自分の目の前を指し示したリュナンに、クライスは従う。カチャ、と鍵を閉める乾いた音の後、椅子に座るリュナンの前へ移動する。そこにはもう一脚、向かい合わせの形で椅子が置かれていた。
「座って」
「はい、失礼します」
クライスは鎧の下に着る白い長袖のシャツと、同じく白いスラックスに乗馬用ブーツの服装だった。その様子を見ると、今日も兵舎に朝から詰めていたのだろう。感心しながら、リュナンはにっこりと微笑んだ。
「まずは、騎士叙任おめでとう。あの鎧姿、似合っていたよ。」
「は…。勿体無いお言葉、ありがとうございます」
そう言うとクライスは深々と頭を垂れた。
「…ですが…あの……、リュナン様…この前は、御前にて、大変な粗相を……」
「ん?」
眉を下げたクライスがもごもごと言い淀んでいる。やがて申し訳ありませんでした、と聞こえた。無理もない。あの部屋で自分や他の者の目がある中、全裸で吐精し、失禁までしたのだから。
「粗相、粗相ねえ……。僕は気にしていないから、クライスもそんなに思い詰めるなよ」
「は………。」
「何だ?その事で責められると思ったのか?」
「いえ、そんな……。ご厚情、ありがとうございます。」
あの出来事がリュナンによって仕組まれたものであったとは、露にも思っていない様だった。最も何か思ったところで、クライスは口にしないだろうが。
「今日はね、クライス。君のことをもっと知りたいと思って呼んだんだ」
「は、私のこと……ですか?」
「そうさ、オイゲンから聞いて、君の戦闘技能や成績といった大体の事は把握している。でも、これから親密になる家臣の事をもっと知っておきたいと思うのは当然だろう?」
近衛の事を言っているのだと察したクライスは、従順な反応を見せた。
「はい。ありがたき事と存じます」
「そんなに固くならなくてもいいよ、年もあまり変わらないんだ。…リラックスして、僕の質問に答えてくれたらいい。」
する、とリュナンの手がクライスへ伸ばされると、髪を一撫でする。少し驚いたクライスがリュナンを見ると、細められた目がまるで獲物を見つめる鷹の如くきらりと光った様に、クライスは感じた。
「サラサラだな、色も綺麗だ」
「…………。」
主君にそう褒められても、クライスはどう反応していいのか分からず無言でいるしかなかった。
「初めて君を見たときから、君に触れたいと思っていたよ。君に触れて、全てを知りたいと」
「それは……リュナン様………」
リュナンの言葉の意図する事を推測したのか、すっかり困った顔になっているクライスが愛おしい。
「男同士なのに、こんな事を言われるのは気持ち悪いかい?」
「い、いえっ……そんな、事は……」
「僕はね、とても興味があるんだ。例えば、こことか」
「!」
不意に下腹部に這わされたリュナンの手に、クライスはびくりと震えた。
「この前も見せてもらったけど、大きいよね、すごく…。割礼もしてあって、キレイな形で」
「リュナン、様……お、お戯れは、お止め下さい……」
「初めて抜いたのはいつだ?」
「…はっ……?!…」
思わぬ質問に、クライスが目を白黒させる。しばらく部屋の中に沈黙が続いたが、クライスの白かった頬には少し赤みが差していた。
「答えろ」
「……お、覚えて………ませ…」
「僕を欺くな、分かるようにちゃんと言え」
「っ……。…確か……十四の時……で…」
「ふうん、結構遅いんだな」
ストイックな顔をした彼のことだ、性への興味が薄かったのだとしたら合点がいく。
「あの…、リュナン様…お願いです、手を、離して下さい…」
「ん?」
弱々しくそう訴えるクライスに、リュナンはにやりと口角を上げた。
「なんだ、僕に触られて勃起したのか?」
リュナンの手の中には、クライスのものが固く熱を持ち始めているのが伝わっていた。本当に軽く触られただけで勃たせたのではないだろう。クライスの性感を引き立たせたスパイス――恐らく、羞恥によるものだ。やはりクライスにはそちらの素質がある。それは一度引き起こしてやれば、後は勝手にどんどん高まっていくはずだ。
現に、クライスはスラックスの前を少し押し上げているそれを恥じ、唇を噛み下を向いていた。
「いいよ、クライス」
そう言ってリュナンはあっさり手を離すと、足を組んで椅子に座り直した。
「す、すみません、こんな……お目汚しを……」
膨らんだ箇所を手で覆い隠しながら、クライスは謝罪していた。しかし。
「辛いだろう?自分で扱いて、処理していいぞ」
主君が、とんでもないことを告げてくる。
「しょ、り……?」
「ここでシゴいてイって見せろ。命令だ」
聞き間違いかと思ったクライスに、より直接的な表現をしたリュナンの顔が映る。表情は先程から変わらずにこやかだったが、目が笑っていない。
背筋に伝う得体の知れない感覚に、クライスはぶるりと震えた。
「僕が命令を出したら、返事をしろ。返事は、はいだ。それ以外は認めない。」
「………………。は………い………。」
リュナンの深い蒼の瞳に貫かれながら、クライスは掠れた声で家臣としての初めての返事をした。

震える指でベルトをバックルから外し、スラックスの前を寛げ、半立ちの陰茎を下着から取り出した。恥ずかしい肉の全体を覆い隠すように手で握り込んだとき、はめていた白い手袋の存在に気づく。慌てて外そうと、右手を口元にやると歯で布端を噛み、一気に引き抜いた。
「それ、いいな。手袋咥えたままやって見せてくれ。あ、左手はそのままで」
リュナンがそう告げたので、クライスは外した手袋を口に咥えたたまま、再び右手を棒に沿わせた。
「……ん………」
股座から伸びたそれを握り、おずおずと上下に動かし始める。
窓からは明るい陽が差し込んでいて、目の前には主君であるリュナンが居る。その視線の中にあって、自慰行為を強制されるとはクライスにとって夢にも思わなかった。
「…ぅ………」
それでも次第に反応を見せ、質量を増す自身の肉棒に、情けなさで涙の膜が瞳を覆った。胸の奥がぎゅっと締め付けられるような不安に対し、局部に伝わる刺激で頭の中が混乱していく。
「だんだん大きくなってきたな…。その調子で、クライスの良いところ擦ってみてくれ」
そんなクライスを前に、リュナンはいたく上機嫌だった。自分より年上の、整った身体と顔をした男が、命じられるまま自慰をしている。いつしかフゥフゥと上がった息づかいが部屋に響き、手袋を噛んだ口から、微かに呻くような声が漏れている。
握られた指の隙間からちらりと覗く赤い肉棒の先端には、透明な液体が滲み出していた。間も無く、クライスが扱く度にクチュリと水音がし始める。
「濡れてる。…我慢しなくていいんだよ?」
「……ゥ………ンッ………ンン…」
そう指摘すると、クライスは目を閉じ、より顔を赤くして首を横に振った。しかし身体は限界が近いのだろう。始め内側に向けられていた膝はいつの間にか外向きになっていて、ブーツは踵が上がり、爪先に力が入っているのが見て取れた。
時折、びくり、びくりと内腿が震えている。何度かやってきている波をクライスは必死で抑えつけているようだった。
「…ンッ…、ン……!……ゥ、……ゥン゛ン……」
じゅく、プジュ、と水音が重くなってきた事を悟り、恥ずかしさからか手袋がはまったままの左手をも幹に沿わせて、流れるカウパーを拭っているようだった。だがすぐにカリ首を擦る右手により、尿道口からトロトロと我慢汁が吹き出してきて、局部から響く濡れた音は止まらない。そしていじらしく腰をくねらせる様子に、見ているリュナンは予想以上の淫らさだと、唇を舐めた。
「すごいな、クライス……。いつでもイっていいからな」
リュナンからの射精の許可が下りたからか、クライスの手の動きが加速していく。
熱く溶けそうな快楽で脳が痺れ、座面の上で腰が跳ねた。と、ビクビクと震えた亀頭が膨れ、咄嗟にそれを両手で覆う。
「ンッ、ンッ、……ンゥ゛、!…ンンッ、ン――ッ!!」
喉の奥で圧し殺した声を上ずらせながら、クライスは吐精した。濡れてグチャグチャになっていた指の間から、白く濁った精液がわずかに飛び、左の手袋に降りかかる。何度かに分けてそのような放出が続くのに合わせて、背中が仰け反り、椅子の足がついにガタリと音を立てる。
その様子を、リュナンは目を逸らすことなくじっと見ていた。精子特有の青臭い香りが部屋に漂うと、クライスが自室で達したことがますます現実味を帯びて感じられ、興奮した。

やがて椅子の上で跳ねていたクライスの身体が肩で息をつくだけになると、リュナンは椅子から立ち上がり、近づいた。
食んでいたままの手袋を軽く引くと、ぐっしょりと唾の滲みたそれが唇から離れ、銀色の涎の糸を引いて床に落ちた。はふ…と熱い息が漏れ、濡れて熱に浮かされた瞳がゆっくりと開けられる。ぼやけた視界には、自身を真っ直ぐに見つめるリュナンの姿が映し出された。
「…ハァッ…ハァ、ハァ………リュナ、さま……」
息も絶え絶えに、クライスが主君の名を口にする。
「手、見せて」
リュナンがクライスのペニスに添えられたままで力の抜けた手を取ると、二チャリと音を響かせた。両手とも、内側が大量の精液で白くドロドロになっている。
「いっぱい出したな?」
「………すみま、せ……。…み、ぐるし……」
「何を言っている、すごく良かったよ、クライスのオナニーする姿」
「ぁ………」
そう言ってリュナンが頭を優しく撫でると、クライスはぶるりと震えた。ぞくぞくと、また胸の奥からおかしな感情が上がって来るのを感じて、クライスはそれを否定するように瞳を閉じた。
――違う、これは……。
「いつもこんなにエロいのか?それとも、誰かに仕込まれたのか」
「……っ」
「図星か」
リュナンの言葉に、あからさまに動揺を見せるクライスが見ていて楽しい。
「相手は誰だ?女か?…いや……この前フェラさせた時の事を考えると、男だな」
普通、男に男の陰茎を差し出してあんなに上手く奉仕出来る訳がない。しかも精液を飲んだのだ、クライスは。
「ぁ……あ………、違い、ます…っ……自分は……」
「また嘘を言っているな。当ててやろうか?……あの男だろ?叙任式で君の隣にいた、緑の…」
「止めっ…!!リュナン様!!」
クライスの叫び声が部屋に響き渡った。それが何よりの肯定の証だというのに、哀れな家臣はぶるぶると身を震わせ、見開いた瞳から涙を零し始めた。
「…うっ………ぁ………」
「どうしたんだ、そんなに声を荒げて。よっぽど知られたくなかったのかな」
ふふ、と笑いながら、リュナンはクライスの顔を覗き込み、指で瞳の端の涙をすくい取った。
「ぅ……、リュナン様、お願い、ですっ………この、ことは……誰にも…、言わな、で…下さい……っ」
クライスは明らかに動揺しながら、リュナンに乞うた。
「いいよ、むしろ何を怖れているんだ?彼の事が好きなんだろう?」
「っう、ううっ………っ、く、」
再び固く閉じた目からぽろぽろと涙が零れ落ちた。暴かれることに余程慣れていないのか、どうせその態度では薄々周りも気づいているような気がしないでも無かったが、今はクライスを安心させることにした。
「クライスが誰を好きであれ、クライスの主君は僕一人だけだ。僕の言う事を聞いてくれるのなら、引き離すような事はしないよ」
そう言って髪を撫でてやると、今にもしゃくり上げそうだった鼻を啜り、大きく息を吐いた。
「ふぇ……ぅ………。ありが、と……ござぃ…ます……リュナン、さま……」
「そいつとはいつから続いているんだ?」
「……同じ、家で……暮らして……。…その時、から……」
「ふうん」
この真面目でストイックな顔の裏にそんな関係を隠していた事に純粋に興味があったが、おいおい聞き出せば良いかとリュナンは思った。
それより、今この目の前にいるクライスをどう調教してやろうか…、興味の先はそこへ向かっていた。

2015.3.20