お返しは計画的に

アークラ小説、バレンタインのと対になる、ちょっと遅れたホワイトデーネタの話です。甘々でただやってるだけ。
まだラゼリアで士官学校の頃の話という設定です。



日が落ち、夜の帳が下りてすっかり暗くなったラゼリアの兵舎の中、多くの兵士達が眠りにつこうとしていた。
その中の一室、アーキスとクライスの部屋も例外ではない。二人はすでに寝巻きに着替え、個々のベッドの上に移動していた。
「…そう言えば……。」
ベッドの傍に置いたカンテラの灯りを落とそうとしたクライスが、何かを思い出した様に呟く。
「あー?どうしたぁ?」
大口を開けてあくびをしていたアーキスが寝転びながら横を向くと、クライスと目が合った。
「お前、今日、ちゃんとこの前の”お返し''はしたのか?」
「は?何のことだよ?」
「やっぱりな…。お前って奴は…」
ハァ、とクライスが呆れたようにため息を吐く。
「俺、何かお前に借りてたか?」
「バカ、俺の事じゃない。」
一体何のことだかさっぱり思い当たらないままバカ呼ばわりされ、アーキスの顔がふくれて不機嫌になる。何だ何だとぶつくさ言い始める様子を見ると、どうやら本当に心当たりが無いらしい。
「…今日は、ホワイトデーだったんだが」
クライスがそう漏らすと、アーキスははたと動きを止めた。さすがに事態に気づいたらしく、顰めていた眉が上がったと思えば、見開いた目がクライスの方を向いた。
「やっべ……忘れてた」
一か月前は貰う数の多さであんなにはしゃいでいたというのに、いざ自分がお返しを用意する日が来た途端これである。
「うわぁ、それで今日女どもの態度がやけに冷たかったのか…!」
「最低だな」
慌てふためくアーキスに、クライスはやれやれと肩を落とした。
「なっ、何でもっと早く教えてくれなかったんだよ!」
「返しを用意するかは個人的な事だろう。忘れていたのなら、お前にとってそれまでの相手だったという事だ。…まあ、明日から女たちからは針のむしろだろうが」
「うぐぐ…」
クライスの最もな言葉に、アーキスは頭を抱えた。
「い、いや、今からでも間に合う…明日の朝1番で渡せば何とか…」
「どこに日の出前から開いている店があるんだ、それに明日は遠練が…」
「だあっ、もう、じゃあ今から何か持ってくしか」
掛け布団を跳ね上げ、起き上がったアーキスの動きが止まる。
「「……何を?」」
同じ言葉が重なって、バッと横を向いたアーキスとクライスの目が再び合わさった。もはや付き合っていられないと、スッとそれから目を離した時、部屋に情けない声が響いた。
「うう、クライス、俺どうしたらいいんだよお……」
(やれやれ…。)
去年ならば実家暮らしだったため、お返しのクッキーなり何なりをメイドに命じればすぐに用意して貰う事ができた。…現に去年もそれで乗り切った事すらアーキスは忘れているらしかったが。
しかし、兵舎に身一つで下宿している今は違う。
兵舎内にも少しは軽食を売る店があったが、さすがにこの時間、商人が居るとは思えない。食堂も閉まっているだろうし、第一、女性の喜びそうなお返しを、アーキスの貰っていた数…確か20個を、今から用意するのは不可能に近い。
「諦めろ、そして素直に謝ればいい」
「そんなの俺のプライドが許さねえよ…何か手は、ないか…」
バレンタインであれだけチョコレートをせびり回っていたというのに、今さらプライドも何もあったものではないとクライスは思ったが、とにかくアーキスは何か用意したいらしい。
本音を言えば早く灯りを消して寝たかったが、ウンウンと唸っているアーキスを見捨てる訳にもいかず、クライスは仕方なく一緒に考えてやる事にした。
「食堂に行けば、何か材料があるかもしれないな…。砂糖でもあれば、飴が作れる」
「え?クライス、それ本当か!?」
クライスの言葉に、アーキスは食らいついた。
「おいおい、それを早く教えろよ!じゃあ行くか、相棒!」
言うが早いか、アーキスは室内靴を履くと立ち上がり、クライスの掛け布団をめくって腕を引いた。
「なっ、何で俺まで」
「だって俺作り方分かんねぇし、なあ、頼むぜクライス、後生だから」
アーキスが一縷の望みを託すように、顔の前で手を合わせている。
(言わなければ良かった……。)
結局、アーキスに引きずられるようにして部屋を出る事になったのだった。

部屋を出た二人は、暗く静まり返った廊下をカンテラの灯りを頼りに忍び足で歩き、ようやく目的の食堂へたどり着いた。
オープンスペースになっているそこは、扉もなく広い机とイスがただ規則的に置かれているだけの場所だ。食事時は賑やかなそこに、もちろん今は誰もいない。
「ええと確か…こっちだったっけ」
キョロキョロと辺りを見回しながら、壁際の調理場へ移動する。調理場と食堂とを隔てるカウンターの合間には腰までの高さの開き戸があり、勝手に開かないように一応鍵が掛けられていたが、アーキスはそれをひょいと跨いで中へと進入していった。
「おい、アーキス……」
「クライスも、見つからない内に早く来いよ」
再びハァと肩を落としながら、その戸を跨いでカウンターの奥へ進むと、アーキスはすでに食材の入った戸棚を開けて中の物を物色していた。
「砂糖、砂糖……。お、これか?」
「それ、塩じゃないか」
「本当だ、危ねー」
こういう物盗りまがいの事をするのは騎士道にいたく反するが、昔からの付き合い上、家にある食べ物をアーキスと共に漁る経験が無いわけではなかった。が、それはアーキスの実家の中の話で、まさか兵舎内でそれをする羽目になるとはクライスは思っていなかった。
出来れば見つかって咎を受ける前にさっさと部屋に戻りたかったのだが、アーキスの悪事に付き合わされた以上、面倒でも協力してやるしかない。
開かれたままの戸棚の中を、カンテラで照らしながら探っていくと、目当ての茶色い粒が入った袋を発見した。
「…アーキス、これだ。」
「ん?何だこれ、砂糖?粒、デカくないか?」
「ザラメの砂糖だ。これに水を入れて、火にかければいい」
「へえ、不思議だな」
アーキスがさっそく釜戸の準備をし始めたので、クライスも脇にカンテラを置き、小振りの鍋を取り出した。20人分だが、さすがに食堂とあって道具や材料は豊富だ。飴を入れる平たくて大きな皿とスプーン、手持ち用の串も手早く調達し、準備は整った。
「オッケー、火が付いたぜ、クライス」
小声でアーキスがそう知らせてきたので、用意した鍋に飲み水と袋の中のザラメをなるべく音を立てないよう慎重に入れて、火にかけた。
「焦げないように調整してくれ」
「ああ、ところでよくこんなの知ってるな。飴の作り方なんて」
「リィナと……、作る時に手伝った事があるからな」
「ほう、さすがだぜ、クライスお兄様」
ヒュウと口笛を吹いて戯けているアーキスに、静かにしろと一蹴する。
本当はお菓子作りが好きな母とよく一緒に作っていたのだが、そこまでは言わなかった。

鍋の中のザラメがすっかり溶けると、火から下ろして中身をすくいながら平皿に移した。トロトロの黄金色に光るそれに串を刺した後、しばらく冷まさねばならない。
「すげえ、本当にこれが飴になるんだな」
その一連の作業を見ながら、アーキスの瞳も暗い中キラキラと光っていた。
「さっさと火を消して部屋に戻るぞ。皿は借りて行こう。鍋も綺麗に洗って返さないとな。」
クライスはあくまで冷静に、そしてテキパキとアーキスが開き倒した戸棚を元通りに閉めたり、釜戸の火の始末をこなしていった。その姿にアーキスの心がきゅんとなる。なんて頼れる存在なのかと、思わず抱きしめようと手を伸ばしたが、その手に飴の乗った平皿が乗せられた。
「あれ?」
「ぼやぼやしてないで行くぞ」
そう言ったクライスはカンテラと鍋を持ち、歩き出した。
「あ、待てって…うおっと、ば、バランスが…」
手元が暗くなり、慌ててアーキスも歩き出した。クライスの持つ灯りを頼りにし、早足で自室へと戻る。

幸いにも、誰にも見つからずに目的を遂行する事が出来た。
扉を閉めて鍵をかけ、ようやくホッと一息付いた二人は、手の中の荷物を机に置くと向き合った。
「半刻もすれば、固まっているだろうな」
「はー、良かった良かった、これで大丈…」
「でも寝るぞ」
クライスはそう言うと、カンテラの蓋を開けていよいよ火を消そうとしている。
「ま、待てよ!それじゃ間に合わねぇし!」
「……。こんな夜更けにまた部屋を出て女のところになんか行ったら、それこそ顰蹙を買うだろうな?それでも出歩いて、見つかって明日オヤジに殴られたいならお前一人で行けよ。」
「うっ……。」
カンテラを差し出されたが、アーキスはそれを受け取る事は出来なかった。オイゲンのオヤジも怖いが、今のクライスの顔も怖ろしいことになっている。
「正直に、作るのが一日遅くなったと言って謝れ。それから渡せばいい」
「うむむ……。分かったよ……。」
あと、使った道具を食堂へ返すのも自分でやれよとだけクライスは言うと、ベッドへ向かって歩き出した。
「あ、待てよ…。」
アーキスもそれを追ったが、何か手に抱えている。先ほどザラメを溶かした小鍋だった。
「せっかくだから味見しようぜ」
この後に及んでよくそんな呑気にしていられるなと呆れたクライスは、はぁ、と何度目かのため息を吐いた。
「俺はもう寝る、疲れた…」
「ほら」
「!」
鍋の底にこびり付いていたまだ柔らかい飴を人差し指で掬うと、アーキスはクライスの唇にそれを差し出してきた。そして強引に柔らかい隙間へ押し入れたため、舐めざるを得ない。
ちゅ、という水音と共に、甘い砂糖の味が口中に広がる。
「…ぅ、……ン……」
仕方なく、アーキスの甘い人差し指を軽く吸って、口から離した。
「疲れた時こそ、甘いものって言うだろ」
恨めしそうに見つめるクライスに、アーキスはおどけてみせた。とかく、この相棒でもあり恋人は、すぐに調子に乗る。
「俺も味見させて」
「…!」
後頭部に手が回されたかと思うと、濡れた唇にキスをされた。クライスの口に仄かに香る甘味を堪能するのに、遠慮がない。
さっきはかわされてしまったそれが出来たことに満足して、アーキスはニヤリと笑みをこぼした。
「ありがとな、ホント助かった」
唇を離し、真顔でそう言われて、クライスの鼓動がどくりと胸をうつ。思わず少し背けた顔に朱が差してくるのが分かった。
「来年は、ちゃんと自分で準備をしてくれよ…」
「ああ」
「アーキス、明日は早いんだ、寝ないと……」
「分かってるって」
そこまで言って、何故かアーキスが同じベッドにいて、なおかつ自らを押し倒していることにクライスは気づいた。
「でも、クライスには、ちゃんと今日中にお返しさせてもらうぜ」
「…は……?何を言って……」
「甘いの、好きだろ?」
柔らかく糸を引く甘い飴を纏った人差し指と中指の二本が、再び唇を割って口内に挿れられる。
「ッは……、アーキ…ス……、んむ…」
その二本の指で舌を撫でられ、堪らずクライスはまたその甘い指を吸った。
チュパ、チュパと水音が響く中、アーキスの左手はクライスの寝巻きのズボンをゴソゴソと下ろし始めていた。
「ンッ、ン――…、」
貴重な睡眠時間がまた削られてしまう、とクライスは首を横に振ったが、アーキスは構うことなく性器に触れてくる。
ううと呻き、膝を曲げてベッドをずり上がろうとすると、アーキスが耳元に顔を寄せ、ちょっだけだから、と甘く囁いた。
耳に息がかかり、またじんわりと頬の赤みが増してしまうのをクライスは感じていた。
口の中が指を吸う度にどんどん甘くなっていく。
「美味い?クライス」
「…ン……」
虫歯になりそうだ、と身体を横たえたせいで襲ってきた眠気でややぼんやりとした頭が訴えてきたため、口から指を引き抜いたアーキスが次に取ろうとしている行為への反応が遅れた。
クライスが眠そうに瞳を閉じているのをいいことに、アーキスはクライスのズボンの中から取り出した砲身に狙いを定めると、その上で鍋の上下を返した。
底から滑り落ちた飴が、とろとろと性器を伝っていく。
「ひぁ…!何して、アーキスっ…!?」
ヌルリと秘部を伝う粘着質な感触に気づいて目を開けた時には、もう遅かった。
亀頭はもちろん、棒に沿って流れたそれは下にある袋と会陰まで濡らし、最終的に尻の窄まりまで辿り付いていた。
少し身じろぐと、ヌチャ…とそこから音がする。
「ふ、あっ…!バカっ…!何て、ことっ」
「すげ…クライスのチンコ飴、いただきまーす」
「あ、ぁっ!」
鍋を置いたアーキスが萎えたそれを持ち上げぱくりと食らいついたため、クライスの言葉は強制的に遮られた。ペロペロと舌で飴に塗れたペニス全体が舐められ、その刺激でみるみる内に肉茎は質量を増していく。敏感なところを這いずり回る舌の熱い感触に堪らず、ひぅ、と喉の奥が震えた。
「クライスのチンコ、でっかいし、超甘ぇ…」
「やっ、ぁ、あ…!この、ヘンタイっ……!!」
「変態で結構、その変態に舐められて気持ち良くなってるのはだーれだ?」
「ひぁっ!ァう……!ンンっ!」
アーキスが大口を開け、亀頭をすっぽりと口に入れると、飴玉を転がすように舌を小刻みに動かして愛撫していく。時折吸い上げ、意地悪く舌先で尿道口をほじると、甘みに混じって仄かに苦じょっぱい味がした。
「ゃ……ア、ハッ…、ァアン…!、…ァンッ……」
表面がふやけてしまいそうなくらいに舐め続けられて、もはや声にまで甘さが回ったかのように、淫らな喘ぎが止まらなかった。
「ん、いい声出てるなぁクライス…。こっちも舐めてやろうな」
アーキスの舌が裏筋を下り、袋の表面に這わされたかと思うと、裏側にまで丹念に舌が差し込まれて、ビクビクとクライスの腰が快感に震えた。
ふとアーキスが目線を上げると、黄金色をした飴の残骸と唾液に、先端から分泌された我慢汁で陰茎の全部がてらてらと濡れ光っているのが確認できた。さらに上のクライスの顔を見れば、頬は蒸気して真っ赤で、瞳は薄く涙を張って潤み、蕩けていた。
「やらしいな…クライス…。」
「ハァ、…ン……も、ぃ、加減に……」
「まだこっちも、飴残ってる」
そう言うとアーキスは、人差し指をクライスの後肛に滑り込ませた。飴でぬめったその中心を押せば、ぬちゅりと音を立てて襞の中にその指が飲み込まれていく。
「ゃッ…!やらぁ……、中、はっ…」
「でもクライスの下の口も、飴食べたいってさ」
「そんな、ッ…!…じょう、談で…ごまかす、なぁっ……」
「へへ…ばれた?」
しかし指は溶けた飴の助けもあり、どんどん奥へ進み、肉壁をかき回した。それがクライスのいいところに当たると、また可愛らしい喘ぎ声が部屋に響く。
「ぁっ、ン…!ンッ……、ちょ…と、だけって、いった…、アッ!……くせに……!」
「悪い悪い、も、入れるから、な…?」
まるで催促したかのように受け取られ、クライスは焦った。だが指が抜かれる刺激で身悶えている隙にアーキスに両脚を抱えられてしまい、もはやなす術がない。
熱くて硬い感触が蕾にあてがわれた。
「ふぁ、ン…!!あ、――ァアアッ!」
ヌプ、とアーキスの怒張が入り込んできて、そのまま一気に深いところまで突かれる。すっぽり埋められた結合部の隙間から垂れた飴がアーキスの陰毛に絡み、てらてらと濡れ光っている。
「はぁ、すっげ…粘ついて……糸引いてる…」
かき混ぜるように腰を動かし、その感触を楽しむ。ヌチャヌチャと響く淫らな音に加えて、狭いベッドがギシギシと軋んだが、構わずクライスの脚を抱えながら全体を揺さぶり続けた。
「ァ、ハァッ…!ァッ、アッ…ひッ!んぁん、アッ…」
気持ち良いところを連続して突かれることで、否が応でも性感が高まっていく。頭に血が上り、じわりと広がる快楽に、腰から下までもが蕩けそうだった。
「うっ…、も、イク……」
息を上げたアーキスの声が耳に入る。
「ッアア…!ゃ、中ぁ……出す、なァッ!…ッアァッ――…!」
だが、クライスの訴えも虚しくアーキスのものがビクビクと痙攣しながら、直腸内にたっぷりと精を注いでいく。最後に一際大きく突かれて、クライスのものからもこぷりと白い精液が押し出すように放出されていた。
しばらくハァハァと荒い息を吐いた後、熱いものがずるりと抜き取られる。
「あ――…、良かった……」
感極まったようにアーキスが呟くと、組み敷いたクライスの上にそのまま倒れ込んだ。中での絶頂の余韻に身を浸し、瞳を閉じてはくはくと息を吐くのに薄く開いていた口に、かぷりと噛み付くようにキスを落とす。
「…っ、は……ぁむ……」
舌を絡めてやれば、まだほんのりと甘さが感じられた。それの名残を惜しむようにペロペロと口腔内と唇を舐め、口の端から垂れていた涎も舐め取ると、ようやくクライスを解放する。
愛してる、と囁いて、アーキスはクライスを抱いたまま身体を横にずらすと、ベッドへ沈んだ。
「っふ………。」
下腹部はアーキスと自らが放った精液でドロドロになっていて、しかも、飴が垂れた尻がベタベタして、気持ち悪い。
(アーキス……この、バカ野郎……)
そんなクライスの気も知らず、アーキスは横ですやすやと寝息を立てていた。ほとほと勝手な男だが、真近で体温を感じながら寝顔を見ていると、憎めなくなってしまう。
結局、アーキスの腕の中でどうする事も出来ないまま、自らも重い眠気に誘われたクライスも瞳を閉じた。
油の切れたカンテラの灯りが落ちる頃には、二人共に深い眠りへ誘われていた。

そして迎えた次の日、ベッドの中のクライスに対して平謝りするアーキスの姿があった。
後肛にたっぷり注がれた精液が未処理のまま、しかも上に何もかけずに寝たせいで案の定腹痛が引き起こされ、せっかくの遠乗り練習を休まざるを得なくなったからだ。
「お、俺がクライスの分まで馬走らせて来るから」
「…ああ、そのまましばらく帰って来なくていいぞ。」
布団に包まり丸まっているクライスは、アーキスの方を見向きもしない。
「クライス~~、、すまん…。あ、残った飴は持って帰って来るから…」
「いらん!」
さすがに甘味で釣ったところで機嫌が直りそうもないクライスに、アーキスはしゅんと肩を落とす。遠練行ってきまーす…と小声で言うと、大量の飴の入った袋を片手に部屋を出て行った。
来年からはちゃんと計画して事に及ぶ必要があると流石のアーキスも思ったが、果たしてそれが守られたかどうかは定かではない。

2015.3.16