クローゼットの中③

アークラがクローゼットの中でゴニョゴニョする話、完結です?。
リュナン×クライス要素もちょっと出てきます。あとリィナも。
プレイ的にはそんなに…。結局ラブラブに落ち着いてます。



クライスは完全に、昔――このクローゼットの中で見せていた自身の姿に戻っていた。
「ッー……!ンッ、ンンンッ!!」
アーキスの上で、彼のものを受け入れ、腰を振る。恋人同士、ただ快楽を貪る…。
それはこの秘密の部屋があったからこそ出来たことだった。
腰を落とす度、じんと痺れるような快感が脳を突き抜ける。乳首から始まり、前を弄られ、後ろを指で解され――突き入れる時には、最早蕩けきっていた。
声を抑える為に咬まされたハンカチは涎が滴るほど吸い込まれ、口の中でくちゃくちゃに丸まっていた。
「ンンッ…!フ――ッ、フゥッ、ンッ、!ゥンン…!」
ビンと屹立したアーキスの陰茎を、自ら受け入れ、腰を動かして抽送するように言ったのはアーキスだった。そうすることで羞恥心を煽り、尚更感じ入り易くする。
以前のアーキスならそんなことは言わなかったが、この一年でリュナンへの"奉仕"により開花した被虐性が明らかになってからは、クライスが悦ぶなら、とそういうプレイを強いることも少なくない。
現に、今も太陽が高く登っている時間だというのに、こうして性交を迫られている。
鍵すらないこのクローゼットの中で。

――鍵……。

「ンッ…!ンッ、ンッ、フゥゥッ!ウンッ!」
「…ん?どうした?もう限界?」
「ンンッー!ンッ、ンンッ……」
クライスの動きが止まったため、アーキスが怪訝な顔で声をかける。
何か言いたげな口を塞いでいるハンカチを、そっと外してやった。
「ぷは、…ハァッ、ハァッ……。…か、ぎ……かけて、ない……」
「何だ、今さらそんなことか」
そんなこと、で流されてしまっては困る。もうそろそろ、ここへ来て半刻は裕に過ぎているだろう。いつ誰が呼びに来てもおかしくない。
もし覗かれでもしたら…と、クライスは気が気では無くなっていた。
「じゃあさ、早く終わらせれば良いだろ?俺も手伝うし…ッ!」
「ヒゥン!ンァッ!!アッ、やらぁぁ…!」
おっと、とアーキスが再びクライスの口に濡れそぼったハンカチを押し込んだ。
「あ――ー…声聴きてえのになァ…」
そう言いながら、アーキスはクライスの孔内をぐいぐいと突き上げる。クライスはというと、奥を突かれる刺激にハンカチを噛み締めて身を任せていた。
次第に、アーキスの肉棒の動きに合わせて再び腰を振り始める。
「おおっ、すげ…良い…!クライス…!」
「ンンッ、フゥ、ンッ!ンッ、ンンッ!」
早く、早く、早く……。
誰にも知られない内に、達してしまいたかった。

「そ…、ッだ、見てみろよ、ほら、」
不意に、アーキスが後ろから手を大きく伸ばして、眼前の棚の取手を掴み、開け放った。
キィ…と木の擦れる音と共に、クライスの目の前に現れたのは、光る姿見。
「!!」
そこに映る自分の姿に愕然とする。
「見ろよ……俺の、咥えて、捲れてるぜ…前もこんなにエッチな汁垂らしてさ…」
鏡に映っていたのは、ハンカチを口に押し込まれ、トロンとした瞳の、だらしの無い顔。性器は隆々と勃起して、先端から光る筋を引いていた。
そして――アーキスの言う結合部は、くっきりと血管の浮いて赤くなったペニスを奥深く咥えている。
動く度、赤く濡れたそこは花弁のように開き、捲れ上がっている様が一瞬で目に焼きつく。
そんな自分が、髪を乱して、自らの意思で腰を揺さぶっている。
「真っ昼間にここ使ったこと無かったから、自分の姿、見た事なかったよな?」
余りにも衝撃的で、思わず目を反らす。
「――――!!ン゛ッ……ゥ、ゥウッ……ゥッ」
「ちゃんと見ろよ、クライス。これが、俺とセックスしてる時のお前だよ」
「ンンッ…!ンンーッ!ン――――…」
ぐい、と顎をつかんで見せようとしてくるアーキスに、クライスはブンブンと首を振ってきつく目を瞑り、抵抗する。
「ちゃんと見ないとこうだぜ?」
アーキスはもう片方の手でクライスの陰茎を扱き始めた。もちろん後ろも同時に突きながら。
「ンッ!フ…!!フッ、グ、ゥゥゥ…」
堪らず、涙の滲んだ瞳を開けると、やはりそこにはアーキスにより快楽を受け、声にならない声で喘ぐ自分がいた。
「おっ、締まる…!……ハハッ、クライス、自分のエロい姿見て感じてるのか?」
「ンッ……ンッ………、………!」
身体がビクビクと震えて、尚一層アーキスのものを締め付ける。
もう、限界だった。



――コンコン…

突如響いた音に、二人はビクッと身を竦めた。

――コンコン

聞き間違いかと思ったが、やはり、ノックの音がする。
更に、「お兄様」と呼ぶリィナの声も。

「お兄様ー、アーキス様ー?」
そう、鍵は開いているのだ。
リィナは元々兄の使っていた部屋に、躊躇なく扉を開け、入って来る。
「あら?」と誰もいない部屋に首を傾げながらも、近づいている。
薄い扉はそれを如実に伝えてきた。

クライスはぶるぶると震えながら息を潜め、どうか気付かずにリィナが引き返すことを祈った。
だが、焦ったアーキスがクライスのものを無意識にぎゅうと握り込んだため、その刺激で、絞り出すような声で唸ってしまった。
は、と気づいた時には、リィナの関心は二人の潜むクローゼットへ向けられていた。

「あら、お兄様、そちらにいらっしゃるの?」
「…………!!……………ッ……!」
その瞬間、クライスはパニックになり、ポロポロと涙を零し始めた。
鏡を見てそれに気づいたアーキスがチッと舌を鳴らす。
喉仏を震わせ、嗚咽を漏らしそうになっている口元をハンカチの上から更に抑えてやる。
「どうされたの…?お兄様?」
「開けるなッ!!」
突然の声に、ビクッとリィナがクローゼットの扉へ伸ばした手を引っ込める。
「アーキス…様…?」
「ああ…!すぐ、行くからッ……!外で待ってろ…!!」
「………あ、はいっ…」
アーキスのきつい口調に、リィナは弾かれたように外へ駆け出した。
遠ざかる足音の後、バタン、と扉が閉められる。
と同時に、限界がきた。

「ッは…!クライスッ…!!イク…!!イッ…ク…!!」
「――――――!!――――――ー!!!」
どくりと、アーキスのものが一際大きく脈打ち、クライスの最奥に精を放つ。口を押さえられたクライスは顔を真っ赤にして、その瞬間を鏡で見ていた。
アーキスに種付けされている、涙に濡れた紫の瞳。頭に血が昇り、目の前が真っ白になる。

アーキスの手が緩むと同時に、クライスのものも吐精していた。
ビュルビュルと飛んだそれが、鏡に降りかかり、ガクリと項垂れたクライスを汚していく。






「…………………。」
「ハァ…、ハァ……。クライス…?おーい…」
アーキスはペチペチとクライスの頬を軽く叩いたが、反応が無い。
口からハンカチを引き抜くと、ボトボトと唾液がカーペットに滴り落ちた。
「気絶しちまった……やりすぎたな、こりゃ……」
アーキスは頭を掻きながら、反省した。だが、外でリィナも待っているだろうし、休んでいるヒマは無い。後始末をしなければ。
ズチュリと力を失った自身を抜くと、クライスの噛んでいた濡れたハンカチで簡単に拭い、しまう。
ハンカチはそのままクライスの後孔から溢れた白濁を受けるように、尻に当てがった。
「何か拭くもの……他にないか…」
ごそごそと再び洋服棚を探るが、小さい子供服ばかりで、丁度いい布がない。
いっそそれを使おうかと思い、止めた。クライスの亡き母親が仕立てた服だったりしたら、さすがにいたたまれない。
まだ床に倒れたままのクライスをとりあえず置いて、手頃な布を取ってくることにした。
「…ちょっと待ってろよ……」
上着を肩にかけ、一つキスを落とすと、アーキスはクローゼットを後にした。

「………アーキス様。勝手に入って、ごめんなさい…」
果たして、扉の前には泣きそうに眉を八の字に曲げたリィナがいた。
「ん、ああ、悪い、怒鳴って……。ちょっと取り込み中だった」
「お兄様と、ケンカでもされたの?」
「ケンカ……ううん、まあ、そんなとこか……。」
そこでやっと、クローゼットを開けるなと言った言い訳を何も考えていなかった事にアーキスは気づいた。しまったと思いつつ、適当に話を合わせるしかない。
「あいつ、今は虫の居所が悪いから、まだ部屋には入らないでくれよ」
「………でも、お兄様、……泣いてるみたいだった…」
リィナの言葉に、ギクッとアーキスは肩を潜めた。
相手はクライスの妹だ。思った以上に察しがいい。
「泣いてっ…て、男がそんな簡単に泣くかよっ」
「ウソ、アーキス様、お兄様をいじめたでしょう?」
「はっ…?何でお前、それを…」
「やっぱり!」
「あっ」
まんまとリィナに乗せられて、本当の事を喋ってしまった。
「くそっ…リィナ、もういいだろ、怒るぞ」
「アーキス様ったら、都合が悪くなると不機嫌になるでしょう?昔からお兄様にもワガママばっかり。だから、お兄様は心を痛めてしまったんだわ」
「……………。」
もはやぐうの音も出なかった。
そうだ。今日も懐かしさにかまけて、自分の欲望のままにクライスをあのクローゼットに閉じ込め、セックスを強要してしまった。
始めは嫌がってたのに……クライスは……。

「お兄様は優しいから、お願いされると断れないの。何でも受け入れてしまうから…、だから……。」
リィナがそう言って顔を上げた時、アーキスは先ほどの部屋へ向かって引き返していた。
「すまん、やっぱりもうちょっと待っててくれ、リィナ!」
「アーキス様…」
急ぎ戻って行くアーキスの背中を、リィナは切なげに見送った。

「――クライス!」
ガチャリとクローゼットを開けたアーキスが見たのは、部屋の隅で膝を折り、項垂れて座るクライスの姿だった。
扉を閉めて近づくと、絨毯の上には汚れてボロボロになった布切れが落ちていた。恐らく、シャツか何かを引きちぎったような…。
先ほどの行為で出来た染みをそれで拭ったのだろう。
ちらりと覗く棚の鏡も、こびり付いていた白濁の筋が綺麗に拭われている。
「…ッ、クライス……」
再び名前を呼んでも、クライスは膝に頭を埋めたまま微動だにしない。
怒っているのか。
それとも、やはり…。

アーキスが身を寄せると、やはり、彼は肩を震わせ――静かに泣いていた。
「……ごめんな……………」
肩を抱き、耳元でそう囁くと、クライスはおずおずと顔を上げ、濡れた瞳でアーキスを見た。
「……ど、して……謝るんだ……?」
「ん…?…無理やらしちまったから…だろ?」
「俺のこと、嫌いに……なったんじゃ、無いのか…?」
心細げにそう訴えるクライスの泣き顔が、痛々しい。
「何言って…そんな訳あるかよ!なんでそんな風に思うんだよ!?」
「起きたら…お前が…、居なくて……。」
ああそうか、とアーキスは納得した。
クライスは孤独を嫌う。

「…リィナに、知られて……怒って出て行ったと思って…。汚したのも、全部、そのままで……。俺、必死で拭いて…」
「…悪い、全部俺のせいだ」
「違う…!俺……あ、あんな……みっともない姿で…感じてるなんて、知らなかった…」
「クライス……。」
確かに、ここに来たクライスはいつもより乱れていた。だが、そうなるよう仕向けたのは自分だ。
まるで二人とも、狭いクローゼットの中の魔力に魅せられたように。
それなのにクライスだけは、自己嫌悪に苛まれていたのだ。
「みっともなくなんてないぜ、クライスが感じやすいのは昔からだろ」
「………でも……」
「言ったろ?俺はお前のことが好きだから、どんなクライスでも、愛してるぜ。不安にさせてごめんな……。」
「ッ……グスッ………アーキスぅ……俺も……好き……、愛して……」
言葉が終わらない内から、きつく抱き締めあった。

もう日が傾きかけたらしく、長いオレンジの光がクローゼットの扉の下の隙間から漏れている。
「…今日はこのまま泊まって、それで、ベッドでちゃんと…しようぜ。もう戻って来れないかもしれないからな。」
アーキスの言葉に、クライスは頷いた。

――何時までもここに居てはいけない。自分を見失ってしまう。
しかし、変わらないものもあるのだ。
それは二人だけの秘密にしておきたかった。

次の日、早朝からそのクローゼットには、小さな鍵が取付けられた。

END

(言い訳)
何やら尻切れな感じで終わってしまってすいません。着地点を決めておかないとこうなる。
鏡の前でエロ乱れクライスが書きたかったんですが、アーキスのヘタレDQNぷりには喝を入れたい。
リィナはお兄ちゃんLOVEだけどアーキスも好きなので複雑な心境。2015.3.4