クローゼットの中②
普通のHしかしてません。アークラ初体験、いろんな意味で疲れた…
しかもまだ続きます。
「ん………」
――アーキスの唇が近づくと、自然と瞳を閉じて受け入れている自分がいる。
今日は妹の為にここへ来たはずなのに、もうそれすらも放り出して、恋人との甘い行為に耽ってしまっている…。
そんな力がこのクローゼットの中にはあった。
部屋に充満するカビ臭い湿気た匂いだって、本来なら顔を背けてしまいそうなものなのに、何故か懐かしい。
この絨毯のチクチクする感触も。
――駄目だ、引き戻される。
「……ん………アーキス…よせ、もう、これ以上は……」
「んー?構うもんか、あっちが終わったら呼びに来るだろ、多分」
その点、アーキスは素直だった。
感情の赴くまま、理性より先に手や足が出るのは昔から変わらないし、思ったこともすぐに口にできる。
そんな奔放な、猫のように切れ上がった眼が緑色に光っている。
「んんッ……ぷは、…こらっ…いい加減に……」
「へへ…その前に、我慢出来るのか?」
ニュッと口角を上げて悪戯な笑みを浮かべたアーキスが、ぐりぐりと確かめるように下半身を押し付けてくる。
「キスだけで硬くしちまうなんて、相変わらずだな、クライス」
「ッ……!こ…れは……」
「もう耳まで赤くしてる癖に、そんな顔で抵抗されても誘われてるようにしか見えないって、そろそろ自覚しろよな…」
「アーキ、ッ………」
再び反論しようとして開けた口が、そのままアーキスに奪われる。
易々と舌が差し込まれ、言葉はくぐもった喘ぎにしかならなかった。
クチュクチュと、アーキスの舌が絡みつき、逃げようとしても追随して離さない。かと思えば、根元や歯列の裏側を辿って、また舌のザラザラした部分へと戻ってきたりと、巧みに遊ばれる。
「んッ…!んん、はふ、ぅッ……!…クチュ…、ぅうんッ……ン」
粘膜が直に触れ合うことで、ぞくりと感じる快楽に全身の力が抜けていく。
口の端から涎がみっともなく溢れていくのを、拭うことすら許されない。
「ッぷぁ…!ハァッ、…ハァッ…」
アーキスの言う通り、下半身は既に熱を持ってしまっているのが、自分でも分かった。
「クライス、エロいなー。ちんぽだけじゃなくて乳首まで立たせてさ、どうするんだ?これ」
「ヒンッ…!?」
不意に、服の上からでも分かるくらいにツンと尖った乳首を擦られ、女みたいに高い声が出てしまった。
慌てて手で口を押さえたが、恥ずかしさで頬がかあっと紅潮していくのを感じる。
「ッン…!ぅう……嫌だぁ……ゃッ、め…」
「かわいい声出てるぜ、クライス」
その反応に味を占めたアーキスが、コシコシと執拗にそこを両手で責め始めた。
胸の表面から湧き上がる、むず痒いような快楽から逃れようとしても、背を仰け反らせて腰をくねらすような動きにしかならない。ザリ…とカーペットに擦れた髪が乱れ、撫で付けた前髪が崩れ落ちてきた。
「はぅッ…!ンッ!――ぅう…ン、ンッ!!」
こんな、いつ誰が入って来てもおかしくない簡単な密室の中で、声を荒げたく無い。
口に当てた手の甲を涎まみれにしながら、それでも漏れる声を抑えようとして、咄嗟に右手の人差し指を噛んでしまった。
ガリ、と口の中に嫌な味が広がり、痛みが襲う。
「――グッ!…ン…、ぅ、………ふ…」
「ん、どうした?」
瞳を開けると、手を止め、怪訝な顔をしたアーキスがいた。
「そんな風に口押さえてたら苦しいだろ?」
右手がアーキスによって剥がされる。
「! うわ、痛そ…今、噛んだのか?」
「っ……」
「バカだな、血が出てるぜ。リィナが見たら何て言うか」
「……って、…こえ、……止ま、な…」
震えて、上手く言葉が紡げない。
「俺のせいか…?まあ、とりあえず、消毒にはなるだろ…」
じわりと歯型の形に滲む赤い血を見たアーキスは、その箇所をペロリと舐め、口に含んだ。
「……ぁ…」
熱を持った傷をゆっくりと舌で舐められる。その感触すら心地良く、しばらくされるがままになった。
出血が治まると、アーキスは立ち上がり、洋服棚の小さな引き出しの中をまさぐった。
お、と何か見つけたように呟くと、再び俺の方に向き直る。その手には小さな白いハンカチが握られていた。
「どうせ噛むならさ、こっち、な」
「ん……」
抱き起こされ、折り畳んだそれを咥えさせられる。
「続き、していいか?」
「…………。」
乱れてクシャクシャになった髪を撫でられ、背中をさすられる。
無言でいると、アーキスは身体を密着させて、逃げられないように背後から俺を抱き寄せた。どうあっても、ここで止める気は無いらしい。
「ン………」
アーキスの体温を感じている内に、中途半端に熱を持ったままだった身体がまた疼き出す。再び自身に快楽を与えてくれることを期待しているのだ。
布を咬まされ口を封じられたことで、まるでおしゃぶりを咥えた赤子のように、それに甘えてしまう。
――俺は、なんて…浅ましい…。
返事の代わりにアーキスの手を取ると、俺はその胸に身体を預けていた。
快楽に弱いこの身体は、初めてアーキスと身体を交わした時から何も変わっていない。
むしろ、行為を重ね慣らされていく度に、自分でもどうすればいいのか分からないくらい、高ぶってしまう。
…しかしそれを、嫌では無いと思う自分がいるのも確かだった。
---
夜中、その部屋に据え付けられた小さな明かりを頼りにしながら、二つの影が蠢いている。
「ンァ…!あぁッ、あッ、ゃううっ…!」
アーキスの舌が砲身から下り、柔らかい袋をくすぐったかと思うと会陰をツッ――と伝い、ようやく震えるクライスの蕾に辿り着いた。
尖らせた舌の先で窄まったそれをツンツンと刺激するが、緩まる気配は無い。
「んー…。また緊張してるだろ」
このままでは埒があかないと、アーキスはクライスの腰から脚を抱え込むようにして持ち上げる。
さらに肩と腕で震える脚を固定すると、ぐい、と双丘を両手で開いて、秘部を露わにし、そこに顔を埋める格好になった。
「ん…?石鹸の匂いがする、ここ」
「っぁ、やッ!顔、近ッ…」
「そんな念入りに準備してきてくれたんだな」
スンスンと大袈裟にアーキスは鼻を鳴らしながら、クライスの相変わらずの生真面目さを愛しく思った。
「中は?指とか入れた?」
「…、…入れて、ない…、ただ…洗っただけ…」
ふーん、とアーキスが見る限り、きつく締まったそこはクライスの言う通りのようだった。
女のように濡れないそこは、かなり慣らしてやる必要がある。
「じゃ、とりあえず濡らすか…」
アーキスは口に唾液を溜めると、ピンク色をした震える後孔にかぶりつくようにして舌を這わせた。
「あっ!んぁ……!…ンッ……」
チュク、グチュ…グチャ、と水音が狭い部屋に鳴り響く。壁に反響してやけに大きく聞こえるそれが、クライスの羞恥心を煽った。
唾液を襞の一本一本まで丁寧に塗りつけ、染み込ませるように、アーキスは何度かそれを繰り返す。
ヌルヌルと動く生暖かい舌がくすぐったく、クライスの息が上がるにつれ、次第に入り口が解れてきた。
「ん……ちょっと、開いてきたな…。クライス、これ、舐めて」
アーキスは自らの指をクライスの口へと伸ばした。人差し指と中指で唇をつつかれ、クライスは素直にそれを受け入れる。
「ハァ…、…はむ……んちゅ、ピチャ…」
「そうそう、唾出して、いっぱい濡らせよ」
アーキスはクライスの舌の熱さと柔らかさを堪能しながら、更に唾液を襞の周りに追加する。空いた方の手は、ほったらかしになっていた前を扱いた。
「ンン…!ひぁ、…ンむ、ンッ……」
感じると、濡れたクライスの入り口がひくひくと動くのが分かる。これなら、大丈夫そうだ。
「ん、もういいぜ」
ちゅぽ、とクライスの口から濡れそぼった指を抜いた。クライスが構えてしまう前に、唾液の滴るそれをまずは一本だけ、入れてみる。
クチュリという音と共に、中指の先が穴の中心に埋まった。と同時に、輪状のそこが窄まって、ギュッと締め付けてくる。
「ひっ…!あ、……あ…!入っ…!」
「力抜けよ…クライス」
入ったのはまだほんの少しだったが、相当な異物感を感じているのだろう。しかしここまできて引き下がる事は出来ないと、アーキスは多少強引に指を進めていく。十分に濡らしたかいがあり、そこが傷付いている様子は無かった。
初めて感じたクライスの孔内は熱く、締め付けられて狭いはずなのに、感触は不思議とふわふわとして柔らかい。
「…どうだ?痛くないか?」
指の動きを止め、アーキスはクライスの様子を伺う。
「ん……ハァ…ハァ……、…キツい……けど、大丈夫…」
「もっと息吐け、な」
クライスの額に光る汗を拭ってやりながら、アーキスは再び中指を奥へ進めていく。相変わらず入り口は指が食いちぎられそうな勢いで締まっていたが、それでも何とか第二関節までをすっぽりと埋める事ができた。
「よし、ちょっと動かすぜ」
「んッ…!ぅんっ…!?」
グニグニとアーキスの指が内壁を押し始める。
(ええと、どこだ…?)
アーキスは酒場で聞いた"ある場所"を見つけようと、濡れた内部を上下左右にゆっくりと刺激していく。だが、クライスは眉根を寄せ、ウンウンと呻いているだけであまり気持ち良さそうではない。
(ここじゃ無いのか?それとも、デマだったとか…)
男にしか無いらしいそこを探って、アーキスはもう少し奥まったところへと指を突き入れた。
「………!?ヒッ……!」
瞬間、クライスの下肢にぞわりとした何かが走った。
「あ、ここか…?」
「ッ…!ヒァ、ゃ…!!」
もう一度突かれると、まるで下腹部に痺れるような感覚があり、腰がガクンと跳ねた。
クライスは顔を真っ赤にして、驚いたようにアーキスを見た。
「そこッ…!変、だ…ッ…」
「だろ?"前立腺"って言うらしいぜ」
「ぜ、ん……ンッ!?」
「気持ちいいとこ、だってさ。」
アーキスはクライスがあからさまに反応を見せるのが楽しくて、見つけたそこを擦り、軽く押し続ける。その度にびりびりと、性器を含めた下半身に電流のような甘い快楽が流れた。
「ヒッ、ヒァン…!ッ、ァア……!?ゃ、へん、そこ、変…、んンンッ!」
「すごいな、本当に気持ちいいんだな、クライス」
「やァ……!こん、な、…おかし……イっ!ンゥゥ……!」
気づけば触られてもいない前が、またひくひくと勃起している。中からの刺激で、腰が揺れるのを止められなかった。
「指、もう一本入れるぜ?」
「ヒッ…!!ンァァ…!らめ…!!」
グプリと人差し指を横から差し入れると、クライスは甘く悲鳴を上げ、きゅうきゅうとそれを締め付けた。
「まださすがにキツいな……」
「ゃ、ら…!!抜いッ…て、抜いてッ…!」
「二本ぐらい入らないと、俺のチンコ入れるのなんて無理だぜ、多分」
アーキスはそう言って、狭い肉をこじ開けるように指を奥に進めた。
「んぁ…!ハァッ、アッ!!ンッ、ア――ーッ!」
「ほら、入ったぜ…二本……」
クライスはハァハァと胸を上下させて、その圧迫感に耐えていた。口の端からは透明な唾液が滴っている。
「ぁグッ……ン…ッゥ、ぅあ……」
「辛いか?抜く?」
ズズ…とアーキスが指を出口に向かって引くと、意外にもクライスは先ほどと同じような嬌声を上げた。
「ふぁ、ハッン…ッ!ンァァ…」
「ん?これも気持ちいいのか?」
今度は意図的に、少し抜いては挿れるのを繰り返してやると、その指の動きを追うようにしてクライスの腰が揺れるのが分かった。やはり、感じている。
(これも、イイのか…じゃあ、今度は…)
ズズ…と抜けるくらい引いてから、先ほど見つけた奥の方まで指を突き入れると、クライスの身体が跳ねた。
そのままグイグイと突いてやる。
「ヒァ…!!ヒッ、ゥンンッ!!ンァ、ァ――…!」
すると、今まで聴いた事がないような声でクライスが喘ぎ始めた。泣いているようで、けれど切ない、吐息が混じったような…。
いきり立ったクライスの砲身からは、透明な先走りがポタポタと垂れ、腹に小さな水溜りすら作っている。
今までこんな感じ方をした事はない。
どくりと、心臓が胸を打つ。
「クライス、大丈夫か?すっげえ声、出てるけど」
「…ンァッ、ハァッ…!も、指、ぃい…アーキスの……欲し……」
「ああ、俺も、お前の声聞いてたら、我慢出来なくなってきた…」
まだキツさを残す後孔から指を引き抜くと、素早く腰を抱え込み、そして。
「入れるぜ…」
指よりやや太さのあるそれを、ぴたりと入り口にあてがい、右手を添えて性急に押し込んでいく。
熱く滑った弾力のある襞の感触がして、本当に入るのかと思う間も無く、先ほどの指と同じようにアーキスの肉棒はクライスに飲み込まれていった。
「ッあ、――ーァウ、――ーッ!!!」
「ぅあ…!熱……!それに、キツい…!」
あまりの狭さと締め付ける圧力に、ハァハァと荒い息を吐きながら、しばらく静止せざるを得なかった。
だが、初めて味わう肉の感覚はえもいわれぬほど、熱く、ペニスにダイレクトに性感を与えてくる。さらに、狭いそこは動いてもいないのに、吐く息に合わせてアーキスのものを締め付けていた。
クライスが手を伸ばし、アーキスの首に回す。
「ッは、ハァァッ、ハァッ、も、…と、おく……!」
「クッ……!」
それを聞いて、アーキスは再びグッと腰を持ち上げ、クライスに倒れ込むようにしながら体重をかけた。それでようやく、深いところまで埋まっていく。
「ンァ…!――ァッ!!すご、ぃっ…ッァ、ア――…!」
名前を呼ぼうとしたのが、快感で震えて声にならない。
「ど……だ?クライ、スッ…、良い?」
アーキスの言葉にクライスはコクコクと首を振った。
「ァハッ、!……ァン、ァ!当た、って、るぅ…!ァァッ…!」
「そ、か……じゃ、突いて、やるッ…」
そう言うと、アーキスはぎこちなく腰を振り始めた。
「ァッ!アッ!ィイッ…!ァッ…!」クライスの脚が腰に回って、結合部がより密着する。
全身が揺さぶられ、背中は硬いカーペットにズリズリと摩擦して赤くなっていたが、それも気にならないくらい気持ちいい。アーキスもそれは同じだった。
「ッ!…ァッ…!!すげ、…も、イきそ…!!クライスッ…!」
「ァア、……――――――!!」
アーキスのものがクライスの中で膨らみ、あっという間に弾けた。とほぼ同時に、クライスも達する。
きつく抱き合ったまま、その場に倒れこんだ。
クローゼットの中は、荒い呼吸と熱気に包まれている――。
やがて、嵐が去ったかのように元の静けさを取り戻していった。
「……ッ……ぅ、…ヒック……アーキス……」
「ん……どした…?クライス…」
絶頂を迎え放心し、倒れ放しだったアーキスが目を開けると、腕の中でクライスが啜り泣いていた。
重いのかと身体をずらしてみたが、ヒクヒクと嗚咽が止まらない。
「…どっか痛いのか?」
「っ……ちが、う………」
クライスは顔を覆って、小刻みに震えている。
「どうしたんだよ?やっぱり嫌だった…か?」
「………ちが、逆……っ」
「え?」
「きっ……気持ち、良すぎ……て……っ…俺の身体、……へん、なのかって……」
返ってきた意外な答えに、アーキスが呆気に取られる。
「は、初めて、なのに……っ…すごく、気持ち、良くて……」
恥ずかしそうにそう告白するクライスが、たまらなく可愛い。
「………別に良いじゃん、俺もクライスの中、すげー、良かったし」
「…俺、あんな…喘いで……気持ち悪く、無いかって…」
それが良いんじゃないかとアーキスは思いながら、しかしクライスにとっては深刻な問題なのかもしれない。
「そんな訳ないだろ…。むしろ、感じまくって声出してくれたら嬉しい。…あ、でも」
「…でも?」
不安げに見つめてくるクライスの唇に、アーキスは軽くキスを落とした。
「ここでセックスしたの、俺とおまえだけの、秘密な。」
「……ああ……」
「またしたい、俺、クライスの身体、ハマりそう」
「ん……アーキス……」
今度はクライスの方からアーキスに唇が寄せられた。それが無言で了承したということだと受け取り、アーキスはグッとクライスの背中を抱きしめた。
「痛っ…!」
「え?」
「背中……」
よく見ると、カーペットに擦り付けた白い素肌が赤くなり、皮がめくれているところすらあった。夢中で全く気づいていなかった。
「うわ、ごめん、」
「ぁっ、……!?ゃ、ヒッ……」
クライスが今度はびくりと震え、アーキスを押し退けようとする。
「嫌、ぁっ、あ…!見な……!」
「え?…あ、」
微かに濡れた音がして、アーキスが目をやるとクライスの内腿に自身の出した白濁が伝っているのが分かった。
それからまた泣き出してしまったクライスを必死で宥めたり、救急箱を持って来て擦り剥けた傷に薬を塗ったりと、経験の無い二人は後始末に追われた。
けれど、回を重ねる内――そんなこともあったと思うくらいに、クローゼットの中で蜜月は続いていった。
続
2015.3.1