お仕置き

リュナン×クライス前提、アーキス×クライス小説その2。
タイトル通りリュナンとの関係に腹を立てたアーキスがクライスにお仕置きする話ですが、ヘタレなので詰めが甘いです。
エロはあるけど本番無し。

またクライスが泣かされまくってるので注意



――キィ…

夜の帳がすっかり落ちた兵舎の一室。誰もが寝静まった頃、その扉は微かな音と共に開き、ほとんど音を立てずにまた閉じられた。
そろそろと白い影がベッドに近づき、冷たい布団の中に身を滑り込ませるのと、その声が響いたのはほぼ同時だった。
「…どこ行ってたんだよ」
「っ……。すまない、起こしたか……?」
すぐ横のベッドから、アーキスが声をかけてくる。
「質問に答えろよ、クライス」
明らかに苛立った口調に対して、クライスは背を向けたままだ。
「それとも、起きてたのか…?」
アーキスの言葉を無視して、やり過ごそうとするクライスだったが。
「…、どこ行ってたって聞いてるんだよ!答えろ!」
アーキスが隣のベッドから出て、背後に近づくのが気配で分かる。
「……………。」
けれど、クライスはアーキスの方から顔を背けたまま、無言で布団に包まっていた。
「アイツ……いや………。リュナン様の、所か」
苦々しく続けるアーキスに、クライスは何も反論しない。その通りだからだ。
「何してた?こんな時間まで、一昨日も…昨日も……おかしいだろ?」
リュナンの事を咎めようとするアーキスに、クライスは小さく口を開いた。
「…騎士として、主に仕えてきただけだ……」
「じゃあ何してきた?いや、"やらされた"か?」
「ッ……!アーキス…放っといてくれ…俺とリュナン様の事は……」
「恋人にも言えないような事かよ?なぁ、クライス。俺が気付いてないとでも思ってるのか?そこまで俺もバカじゃないぜ」
ついにアーキスは、クライスの身を覆う布団に手を掛けると、思い切り引き剥がした。
「!!」
薄衣を纏った上半身を露わにさせられ、肩口をつかまれると、グイと無理矢理にアーキスの方を向かせられる。

「言え」

正面にはいつになく真剣な、灰緑の瞳があった。

「……………お前には、言いたく、ない……」

長い沈黙の後、下を向いたクライスは、それだけ言うのが精一杯だった。

「そっか」
上からアーキスの言葉が降ってくる。
先ほどのような怒りの感情が無い、ただ吐き捨てたような。

「じゃあ、身体に聞くしかないな?」

「……っ?……え……」

アーキスから出た思いもよらない言葉に対して、クライスは動揺した。
いつものアーキスなら、それ以上は追求せず、慰めるように優しく抱いてくれる筈なのに。
しかし、淡々とアーキスの手はクライスへ伸び、衣服を引き剥がしにかかっていた。

「嫌だっ……何、す…!」
クライスは慌てて抵抗するが、アーキスは止まらない。
「チッ…動くなよ、ああ、丁度いいなコレ」
あっという間にクライスの腰から抜き取ったベルトを手に、アーキスはクライスを横に突き倒し、シーツに押さえ付けた。
「くっ、…ぃっ、痛……!離せっ!」
更にクライスの腕を取ると後ろに捩じり上げ、ぐるりと一周、革のベルトを手首に巻きつけた。暴れる反対側の手首も同じくつかみ取ると、グルグルとキツく革を巻き、器用にバックルを留めて一まとめにした。
「嫌だっ……止めてくれ、アーキスっ…」
自由に動かせなくなった腕にギュッと拳を握り締め、クライスはそう訴えた。
苦痛と恐怖をたたえた紫の瞳が見上げてくるのに、アーキスの胸がチクリと痛くなる。
「……くそっ…そんな顔が見たくてやってるんじゃねえよっ」
瞬間、夜の闇を引き裂くような音が部屋に轟いた。
敷かれていた薄いシーツを、アーキスが破ったのだ。
長い紐状になったそれで、クライスの瞳が覆われる。
「ひっ………!」
瞬く間に背後からグルグルと布が巻かれて、頭の後ろで結ばれた。
深夜の部屋は闇に塗れて薄暗かったが、強引に視界が奪われてしまったことにクライスは恐怖する。
「嫌だ、アーキス、解いてくれ…!こんなの、嫌だ……!」
「じゃあ、聞かせろよ。リュナン様に何をされたのか、俺に」
「っ…………」

そこまでされて尚、クライスはぶんぶんと横に頭を振った。
本当に、知られたくなかったからだ。

「なら…クライス、これは俺からのお仕置きだ。泣いても喚いても止めないからな」
アーキスは自らに言い聞かせるようにそう呟くと、突っ伏していたクライスの身体を引き起こし、壁にもたれかけさせた。
そしてベルトを外したままになっていたズボンを、クライスの脚から下着ごと抜き取っていく。
「……ぅう……っ」
クライスは抵抗しようと身じろいだが、手首を拘束するベルトの革が一層きつく食い込んだだけだった。
上着のボタンも肌蹴られ、ほぼ一糸まとわぬ姿をアーキスに晒す格好になる。
視界は失われているが、アーキスがそんな自分の姿を刺すように見つめている事は分かった。



「っ、あっ……!」
アーキスの手が胸の中心に触れた。
不意に感じたそれのせいで、その下のクライスの心臓がドクドクと早さを増していく。
アーキスはそれを確認して、くすぐるように乳首に指を這わせると、クライスの引きつった声が部屋に響いた。
「身体は正直だな…?もう、興奮してるのか?」
「ひぁっ……あ……」
「触って欲しそうに震えてるぜ、ここも」
「ッ……!そんな事、な…!ッン」
両の手でクリクリと乳首をこね回されると、あっという間にそれはプクリと膨らみ、硬さを持った。
それを指で摘み、扱き上げられると、クライスの上げる声に甘さが混じる。
「ふぅ…ンッ…!ンぁ、…駄目、…ァ…」
「男なのに乳首感じるんだよな、クライスは」
カリリ、と先端を優しく引っ掻いたり、乳輪ごと捻り、屹立した突起を圧し潰したりと、アーキスの指が様々に刺激を与えてくるようになると、クライスの内に堪らない快感が燻り出す。
視界が阻まれているせいか、余計にその感覚が鋭くなっているようだった。
「…、ゃッ…!ぅウン……らめ、…アッ……」
身体の中心に熱が集まり、先程まで恐怖で萎えていたはずのクライスのペニスは、気付けば隆々と勃起していた。
だがそれには触れず、アーキスはゆるゆると乳首ばかりを弄び続けている。
その切なさに、クライスは身を捩り、荒く息を吐いて耐えるしかなかった。

「ハァ、…ァン……ハァッ…、ぁ…アーキスぅ……」
「何だ?」
「も、乳首ばっかり、…止め……」
「何でだよ、気持ちいいだろ?」
ニヤニヤとアーキスが笑っているような気がして、クライスは自分がわざと焦らされている事を知る。
「つっ…、辛い…から……ッ…、下も、触って……」
「下?ここか?」
アーキスは人差し指で、乳首の下に隆起する美しい胸筋をなぞり、その後汗ばんだ脇腹を掠め、くすぐった。
「ひっ!ひゃんッ……!違、ぅ…!もっと、下…!」
「ここ?どこだよ?もっと足広げて見せろよ」
「ッ………」
高ぶる熱を早くどうにかして欲しくて、クライスは恥ずかしさに堪えつつもアーキスの言葉に従い、震える膝を左右に拡げていく。
冷んやりとした空気が火照った内腿や尻を撫でたので、当然、アーキスにはクライスの秘部の全てが映っているはずだった。
けれどアーキスの指は、あえて性器を避けて皮の薄い内腿や肌を滑るだけで。
「肌赤くなってるぜ、足開いて、厭らしいな…腰浮いてるし」
「ひあっ…」
ぐ、と押し付けるようにアーキスの手が恥骨の辺りに触れた。そのままザラリと音を立てながら、色の薄い陰毛を戯れに擦られる。それだけでクライスは身震いした。
ヒクヒクと存在を誇示するペニスの先には、我慢汁の水溜りがプクリと浮かび上がっていた。
「っ、…ふぇ……っ……、アーキス、触って…!おねが、だからァ……」
「ずっと触ってるだろ?」
「違、ちがうぅ…お、俺の、……ッぅう…、…ペニ、スぅ………」
ようやくクライスは、羞恥で今にも消え入りそうな声でアーキスにそう訴えた。
だが、アーキスは頭をひねる。
「ペニス…ペニスか……。うーん、ちょっと違うな、その言い方は」
「…な、んで……っ、もう、ゃだ……許して……」
「『クライスのおちんぽシゴいて』って言ってみな?そしたら思う存分触ってやるから」
いつも清廉なクライスからすれば、そんな淫語を口にするのは耐え切れないほどの羞恥だろう。
しかし。

「ッ……クライスの……お、ぉち……」
「ん?何だって?もっと大きい声で言えよ」
アーキスがクライスの耳元に顔を寄せ、揶揄うように囁く。真っ赤になった頬が燃えるように熱い。
「ヒッ……、ッ……く、クライスのぉ…お、おちん、ぽっ、し、しご…ぃて、…しごいてッ、くら、さ…!」
クライスは辿々しくも鸚鵡返しのように、アーキスの言葉を紡いだ。
その様に、アーキスの興奮は急激に高まっていく。

「……よく出来ました」

そう言うと、クライスのビクビクと震える陰茎を握り込み、全体を擦り上げ、揉みくちゃにする。
結果、クライスの身体の中心に電流が流れたかのような刺激が貫いた。
「!!――アアァァァッ!!ンアアッ!!」
待ちに待った快楽。
しかしそれは、焦らしに焦らされたクライスにとっては、強すぎるものでしかなかった。
「ヒャァアアッ!!アアッ、アアァッ!!は、はげし、よぉッ…!ンアアッ…!」
「触って欲しかったんだろ?」
「ンやぁっ…!キツ、い…!きちゅいィ…!!もっ、ゆっく、ィイ…!!」
クライスの訴えはお構い無しに、アーキスがクライスの濡れた陰茎をクチクチとこすり上げる厭らしい音が部屋全体に響き渡る。
真っ赤に膨れ上がったそこは敏感になり過ぎて、痛みの方を強くクライスに与えた。

「痛いぃ…!痛い…、アーキスぅ…いたいよぉっ…」
グスグスとすすり泣くクライスに気づいたアーキスは、ハッとして手の動きを和らげた。
「ふぁ……ン……ッ……、ンッ……!」
「あっ、…くそ…これじゃお仕置きにならねえじゃないか…」
だが、クライスの喘ぎが次第に甘さを取り戻していくのを聞いて、アーキスは溜飲を下げる。
「ァ、アンッ…アアッ、ぃい…アーキスぅ……」
「…ちんぽのどこが良いって?」
「ンッ…、ク、くライスのぉ…おちんぽの、さ、先っぽと…くびれの、とこがぁ、アッ!いちば、きもち…いッ……」
「ずいぶんと素直になったな…。そうか、他には?擦る速さはこれでいいのか?」
「ふぁ………も、すこし…はや、くても、イイッ……!アゥゥ……、裏、筋もッ…!撫でられたら、ビリビリするぅ…ッ」
それを聞いて、アーキスは空いていた左の手を添えて、お望み通り裏筋をくすぐるように撫で上げた。途端、ビクビクとクライスの身体が跳ねる。
「ッァア――ッ!アッ、アッ、ぃい、ァ…!」
「イきそうか?凄いな、傘んとこ、開いてる」
「ァアッ!も、イく、イくぅ…!アーキス、アーキスッ…!」
「まぁだだ、クライス」
ビクビクと射精に向けて震えるそれの根元を左手で抑え、なおかつ涎を垂らすように開いた尿道口には右手の平を当て、蓋をする。
「アッ、アンッ…!ヒッ…!も、イきそ、なのに……っ…なん!、でぇ……」
「これくらいで止めたらお仕置きの意味が無いだろ?もう少し、虐めてやる」
「ゃだッ…!も、ゃあっ……!イかせて、アーキス…」
「イきたきゃ勝手にイけよ、これで出せるならな」
きゅう、と根元に当てられている左手が意地悪く締められ、クライスは切なく叫んだ。
「ァッ――!!イッ…ィけなっ……、出せな…ぃぃッ…!」
アーキスの右手は、真っ赤に膨れた亀頭をすっかり覆って、柔らかい平の部分で尿道口を擦り上げている。
そこからジワリと吐き出された白っぽく濁った水がグチャグチャと鳴り、指の間から溢れていく。
カウパーに精液が混ざり、中途半端に達した状態になったクライスの頭は混乱し、どうにかなってしまいそうだった。
「ッウ!ァア――、ァ、ハッ、ハッ…!ゃめ、で…!イ、ぃっ…!イぎ、たぃ…ァッ、ア、アッ――!手、こす、の…!やめぇっ…!!」
強すぎる刺激から思わず腰が引けるのを、アーキスは許さなかった。
「何逃げてんだよ、イきたいんじゃ、ねえのかよっ?」
「手、止めてッ…!止めてェェ…!!も、やらァァァッ!!」
「触ってくれだの、離せだの勝手だな、……悪い子め」
やっとアーキスが手を離すと、勢いを無くした精液がタラタラとクライスの砲身を伝い落ちた。
望んでいたような解放感はなく、どうしようもない熱だけがクライスの内に蟠る。

淫らな動きを無くした部屋の中は、酸素を求めるクライスの荒い呼吸と、嗚咽だけが響いていた。
「はひっ、ヒィッ…、ヒッ……クライス……悪い、子ッ……わ、わゅ…ぃ…グスッ、ぅえ、え……」
「また泣く、泣いて喚けば済むと思うなよ?そうやってリュナン様の前でも泣いて、面白がられてるだけだろ?」
「ッ――――…うえぇっ、えっく、ぁあっ、わぁぁぁっ…」
そのアーキスの言葉を引き金に、ついにクライスは堰を切って泣き出した。わんわんと、部屋中に響き渡るような勢いで。
「こらっ…あんまり大きい声出すなよ、夜だぜ」
慌てて、アーキスはクライスの頭を胸の中に抱える。
「ック、ヒック、ぁあっ、あっ、あっ、ぁああん……ぁああ…」
それでも、クライスの嗚咽は止まらない。

「…なあ、リュナン様に、何された?もっと酷いことか?」
「っ、うぇっ、えっ…ぇっく……アーキスの、ほ、が………ひ、酷ぃい……」
「何だって?」
クライスの思わぬ返答に、アーキスは耳を疑う。
「リュナ、様は……ち、ちゃんと……きもち、良く、してくれ…の、、に……」
「そっか、……悪かったな……」
「グスッ、…ぃ、痛いの、やら……ぉ、俺もッ…こんな、子どもみたいにっ…泣きたく、ない……っ……」
「そうだな、俺が虐め過ぎた。ごめんな、クライス」

アーキスはクライスの視界を奪っていたシーツを外した。涙で濡れたそれが解け落ちると、クライスは薄目を開ける。
「アーキス、アーキス……ゆるして……いい子に、なるからァ…」
「何言ってんだよ、俺が勝手に思い込んでやった事だろ」
涙を滲ませるその瞳に、アーキスは口付けを落とす。
「ッ…違……アーキスが居るのにっ…俺は、リュナン様と……っ……」
「それはもういいから。主命だろ?気に入られてるだけの関係、だよな…?」
アーキスの問いに、クライスはコクリと頷く。
「よしよし、なら、いい子だな…クライスは…」
主君に対して従順過ぎるきらいはさて置き、クライスの心の内を確認出来たことでアーキスは満足し、クライスの肩を抱き寄せた。
「…ぁ……キスして、アーキス…っ…」
そう言って前のめりに身体を擦り寄せてくるクライスが愛おしく、アーキスは思う存分クライスの唇を吸った。
「んッ…クチュ、…はふ……、ッ、んむ、ぷぁ……」
角度を変えて何度も舌を絡ませる。
顔を離した時には、一筋の唾液が唇の間に糸を引いていた。
「ハァ…ハァ……、アーキス……も、手…、外して…」
「ああ…」
そうしてようやく解放したクライスの手首には、革が擦れて出来た痛々しいミミズ腫れの跡が赤く浮かんでいた。
「ッ…、すまん……痛かっただろ?」
だがクライスは横にかぶりを振ると、その手をアーキスに回し、胸の中に身を寄せた。
「アーキス……暖かい…。やっと…こう出来た………」
「クライス……」
ぎゅっとしがみ付いてくるクライスに、アーキスも背中へ手を回し、抱き締め返す。
クライスの胸の鼓動や呼吸は、いつしか安定していた。

(本当は、俺がもっとしっかりしないといけないんだろうけどな……)

リュナンへの嫉妬心がないわけでは無い。
だが、クライスがせっかく築き上げてきた、騎士と主君の関係を壊すわけにもいかない。

今の自分に出来ることは、夜な夜な蒼白な顔をして部屋に戻って来るクライスを抱いてやることだけなのだと、アーキスは思い知った。

2015.2.14